2021.12.14
LTV(ライフタイムバリュー)は企業が継続的に安定した利益をあげる上で、非常に重要な指標です。LTVを高めるためには、ときに顧客との関係づくりや現在の組織体制を根本から見直し改善を図る必要もあるでしょう。
今回はLTVがなぜ重要なのかに加え、算出方法や実際の取り組み事例・LTVを高めるために取り組むべきこと等について解説します。
LTV(ライフタイムバリュー)とは、1人(1社)の顧客が企業と取引を開始してから終えるまでに、どれだけの利益をもたらすかを算出する指標です。日本語では「生涯顧客価値」と翻訳されます。
例えば単価3,000円のサプリメントを販売する、健康食品の通販サービスがあるとします。顧客1人を新規獲得するのに5,000円の広告費用が発生する場合、1度購入してもらうだけでは、2,000円の赤字となってしまいます。
しかし顧客がサプリメントを気に入り、2回・3回とリピートすることで、売上が集客コストを上回り最終的に黒字化することができます。このようにLTVの概念を活かすことで、顧客が生涯にわたってもたらす収益に着目し、中長期的な視点で販促計画を立てることが可能となります。
LTVを重視すべき理由には、新規顧客の獲得が難しくなったという時代背景があります。消費者が購入に至るまでの導線が複雑化し、1人あたりの獲得コストが高まる中、従来の様な「とにかく新規のお客様に1度購入してもらえばOK」という営業手法では、採算がとれなくなってしまったのです。
そこで「顧客1人あたりの獲得コストをどう下げれば良いか?」を考えた時、重要となるのがLTVの視点からみる、先を見据えた事業計画の立案です。新規顧客ばかりを追いかけるのではなく、同時に既存顧客のリピート獲得にも力を入れることで、より費用対効果の高い営業活動を実現するためです。
実際、マーケティング業界では「1:5の法則」という考え方があり、新規顧客を獲得するには、既存顧客の5倍コストがかかるといわれています。既存顧客は一度サービスを利用している分、少ない獲得コストで再度商品を利用してくれる可能性が高いためです。
既存顧客をリピーターへと繋げるためには、メールマガジンやSNSを活用することで、定期的な接触機会を持ち続けることが重要となります。
一方、事業を拡大する上では新規顧客の獲得も必要です。限られたリソースの中で、既存顧客の維持と新規顧客獲得の両方のバランスを調整しながら、計画的に施策を打っていくことがベストです。もし現在、目の前の数字ばかりを追う文化が定着しているのであれば、その企業は新規顧客と既存顧客の両方へ視野を向けた長期的な事業戦略へとシフトする必要があるでしょう。
LTVの算出方法にはいくつかの種類がありますが、代表的な方法を用いて実際に計算してみましょう。
LTV=購買単価×購買頻度×契約継続期間-(新規顧客獲得コスト+既存顧客の維持コスト)
とあるハウスクリーニング業者A社に、顧客Bが年3回のペースで1回2万円のクリーニングを5年間依頼したとしましょう。A社がBに費やした広告費や人件費といった獲得コスト・維持コストが5年間で4万円かかった場合、A社がBから得るLTVは以下のように求められます。
A社のLTV=2万円/回(購買単価)×3回/年(購買頻度)×5年間(契約継続期間)- 4万円/総期間 (新規顧客獲得コスト+既存顧客の維持コスト) = 26万円
よってA社が5年間で顧客Bから得たLTVは、26万円となります。
企業が継続的に利益をあげ続けるには、購買単価×購買頻度×契約継続期間 > 新規顧客獲得コスト+既存顧客の維持コスト の関係を維持する必要があります。もしLTVで十分な利益があがらない場合は
・購買単価を高められないか
・購買頻度を増やせないか
・より長く利用してもらうにはどうすべきか
・新規顧客の獲得コストを下げられないか
・既存顧客の維持コストを下げられないか
といった視点から、現状の仕組みを見直し改善することが求められます。
LTVに着目してサービス内容の改善をされた、とある珈琲ショップS社(以下、S社)の事例についてお話しします。
S社では、本来店舗でバリスタが使用する高品質なコーヒー豆を、個人向けに提供するビジネスモデルを展開していました。本格派のコーヒーを自宅で楽しめる点が魅力でしたが、「商品価値を顧客にうまく伝えきれていない」ことが原因で、商品が比較的高単価なこともあり、売上が伸び悩んでいました。
そこで検討したのが「お店で飲める極上のコーヒーを”自分で淹れられる”」という、商品そのものだけでなく体験することに価値を置いたサービスモデルの実現です。「よい商品を売る」だけでなく、毎朝自宅で、まるでバリスタに入れてもらった一杯を自分で淹れて楽しめる(またそれを周囲にも振舞える)といった継続的な体験を提供することで、顧客に価値を感じてもらおうというわけです。
そのため商品販売とあわせて、店舗と同じようにコーヒーを入れるための「美味しいコーヒーの淹れ方に関する動画の配信」や「専門家にコーヒー豆や機材選びについて無料で相談できるサービス」の提供などを始めることに。定期的に顧客と接触を図るため、公式LINEやInstagramで参考になる情報の発信も実施するなど、一度商品を購入した人にリピーターとなってもらうための仕組みづくりに力を入れました。
これらの取り組みによって、新規のお客様を増やす・リピーター様を増やす(ファンづくり)といった、2軸での顧客獲得を強化することに成功。現在も、引き続き売上強化のためのさらなる施策を検討しています。
ここまで、LTVの概念や重要性について事例を用いながら説明してきました。最後に今後LTVを意識した取り組みにシフトしたい企業が、実践すべき2つの項目についてご紹介します。
まず大切なのが、短期的な数字ばかりを追いかけるのではなく、中長期的な視点にたって事業計画を立案するよう、経営方法の転換をはかることです。もしあなたが経営者や上司の立場なら「今月の売り上げどうなってる?」「月末までに何件数字あげるの?」といった質問を、無意識に口にしていないかを改めて考えてみてください。
今月の売り上げなど短期目標にばかり目が向けば、自ずと既存顧客への対応は疎かになりがちです。そうなると常に新規顧客ばかりを追いかける「自転車操業」のような事業スタイルから、永遠に脱けだせなくなってしまうでしょう。
まずは根本的な考え方を、数か月後の収益を生むために今、何ができるか?に切り替え、既存の営業スタイルや提供サービスを見直すことが重要です。会社全体にLTVの認識定着をはかるためには、上に立つ人材が先を見据えた目標設定や計画立案を率先しておこなうことが必要となります。
LTVを高めるためには「どうすればお客様と長いお付き合いが続けられるだろう」という観点から、具体的な施策を検討することが大切です。
そのために必要となるのが「カスタマージャーニー」を作成し、顧客と企業との理想的なゴールとそこに至るまでの接点を明確化すること。カスタマージャーニーとは、とある企業の製品・サービスを利用する顧客の消費行動を、時系列で視覚化したものを指します。
カスタマージャーニーを用いて顧客との接点を視覚化することで「年に何回商品を購入してもらえるだろう」「そのために何回、いつのタイミングで施策を打つべきだろう」といった、具体的なアクションプランの立案が可能となります。
例えば、とある飲食店が1人の顧客に「誕生日の月」と「クリスマスシーズン」の年2回利用してもらうことを想定した場合、誕生日の前の月に「誕生日の割引クーポン」を配布したり、12月の初頭に「クリスマス特別メニュー」の告知をおくったり、といった具体的な施策が打てるでしょう。
また戦略の内容が偏らないためにも、設定するペルソナは1つに絞らず、何パターンかのカスタマージャーニーを作成するのがおすすめです。
カスタマージャーニーの作成方法やメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▼カスタマージャーニーとは?企業が取り組むべき目的・作り方や、自社事例をわかりやすく解説
▼カスタマージャーニーマップとは – 顧客目線の売れる仕組み作り
今回は「LTV(ライフタイムバリュー)」をテーマに、その概要や企業にとって重要な指標である理由、弊社の事例などをご紹介しました。顧客獲得の難しい昨今において、1人のお客様と “いかに長期的な関係づくりをするか” に重きを置くビジネスモデルへの取り組みの重要性は今後ますます高まると予想されます。
まずは短期的な目標だけでなく、半年後・1年後の収益をあげるための顧客との付き合い方について、検討するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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