2022.03.15
「カスタマーサクセス」は「顧客の成功体験」を目的に、自社商品やサービスに関する能動的なフォローや提案をおこなう職種です。
顧客の成果を第一に考え最適なフォローアップを実施することで、顧客との良質な関係を築き、自社商品を継続的に利用してもらう役割を担います。
今回はそんな「カスタマーサクセス」について、その重要性や企業におけるあり方を、初心者の方にもわかりやすく解説いたします。
目次
カスタマーサクセスとは、自社の商品・サービスを通じて「既存顧客の成功体験」を創出するための役割です。
お客様の納得のいく成果をあげるため、顧客の状態に応じて必要なサービスの追加提案(アップセル・クロスセル)や、継続利用してもらうためのフォローアップ・関係構築を積極的におこないます。
※ アップセル…顧客が購入を検討している商品の「上位商品・サービス」を提案し、購入単価を上昇させる手法のこと。
※ クロスセル…顧客が購入しようとしている商品と「別の商品を単品」あるいは「セット」で提案し、購入単価を上昇させる手法のこと。
この「カスタマーサクセス」においてもっとも大事なのが「企業の最終ゴールは『モノを売ること』ではなく『顧客を成功に導くこと』である」という考え方です。
例えば、とある会社が自社業務の効率化のために月額性の「顧客管理システム」を導入したとしましょう。仮に会社のITリテラシーがそれほど高くなく、導入時に売り手の側のフォローが不十分であった場合、せっかくのサービスが使いこなせず結局は短期で解約してしまったという事態を招きかねません。
また「顧客管理システム」を十分に使いこなせたとしても、顧客との信頼関係が築けていなければ、より高性能で安価な他社サービスに乗り換えられてしまう可能性もあります。
このように現代のビジネスでは、従来の「売って終わり」の営業モデルではなく「導入後、いかに最適なフォローや営業活動をおこない、成果をあげることでサービスを継続してもらうか」というカスタマーサクセスの考え方が注視されるようになりました。
顧客の課題にいち早く着目し、最適な解決策の提示や商材の追加提案をおこなうことで、LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を目指すことが、カスタマーサクセスに求められる使命です。
「カスタマーサポート」や「営業」職と「カスタマーサクセス」の明確な違いがわからないという方も多いのではないでしょうか?以下で両者の関係性や違いを見ていきましょう。
カスタマーサクセスと営業部門との大きな違いは、対象となる「顧客フェーズ」と「活動の目的」にあります。
営業が主に「新規顧客」に向けて活動するのに対し、カスタマーサクセスは「既存顧客」に向けた営業活動やフォローアップをおこないます。
また営業の活動目的が「新たに契約を獲得すること」である一方、カスタマーサクセスは「既存顧客の継続を高められるか」「既存顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を最大化させるか」が主な指標となります。
関係性としては、営業が先陣をきって獲得した契約をカスタマーサクセスが引き継ぎ、より継続的に満足して利用してもらうため、最適な関係構築をおこなうといったイメージです。
「既存顧客向けに自社商品やサービスのフォローをおこなう」という点で両者は共通していますが、主な違いとして「能動的か」「受動的か」という特徴があげられます。
カスタマーサクセスは先述のとおり、顧客の抱える課題解決に対して自ら積極的に働きかけることが求められます。基本的には先方からの問い合わせがある前に、相手の問題を先読みして先手を打つのが特徴です。
対するカスタマーサポートは、顧客からの問い合わせがあった場合のみ、適切な応対や解決策を提示することが求められる「受け身」のスタイルが基本です。
カスタマーサポートが顧客に対し高いホスピタリティを発揮することは、顧客の満足度を高め、カスタマーサクセスがより顧客と関係を深めやすい土台を作ることにも繋がります。
あるいは両者が「顧客にどういった不満があり」「どういった課題で躓(つまづ)きやすいか」等を共有しておくことで、より顧客に寄り添った課題解決・対応をはかることも可能となります。
日本国内で「カスタマーサクセス」を配置している企業は、まだまだ少数派です。
といった企業も多いのではないでしょうか?
カスタマーサクセスを積極的に導入している企業としては
など、買い切り方でなく「継続課金型」の商材を扱う会社が代表的です。
※ SaaS(サース)…ファイル保管やデータ管理などのサービス毎に利用料を支払うことで、必要な機能をクラウド上で利用できる(製品として購入する必要がない)形態のこと。例としては「Zoom」や「Slack」「Google Workspace」等。
これら「サブスクリプション型サービス」では1回あたりの単価が低く、短期で解約されてしまうと十分な収益があがらないため、契約後に積極的な関係構築をはかるカスタマーサクセスの存在が欠かせません。
ただし「顧客満足度を最大化したい」「リピーター獲得を増やしたい」という意思があるならば、規模やサービスの形態を問わず、どんな企業でもカスタマーサクセスの導入を検討する価値があるというのが本記事の主張です。
仮に「自宅向けのトレーニングマシン」をBtoC向けに販売している業者が、カスタマーサクセスの概念を取り入れたとしましょう。販売後の顧客にマシンの使い方をわかりやすく動画で配信する、あるいはマシンと相性の良いプロテインやサプリメントを追加提案するなどの働きかけで、顧客はトレーニングに対しより高い成果を上げられるかもしれません。
また企業に対する信頼感・ロイヤリティがあがり、自ずとリピーターに繋がる可能性もあるでしょう。
「売却」の一点に捉われず、購入後までを含めた顧客の総合的な満足度を高めるといった観点からも、カスタマーサクセスの役割は昨今の企業にとって必要不可欠です。
最後にカスタマーサクセスの成功を目指す上で、企業全体で備えておきたい3つの観点をご紹介します。
ただ闇雲に商品を販売するのではなく「本当に必要とする顧客のみに商品を提供する」といった、営業部やマーケティング部の観点がカスタマーサクセスの成功には欠かせません。
というのも自社サービスで課題解決が難しい顧客に「一時的な売上」を目的として商品を売ることは、売り手側・顧客側の双方にとってマイナスな結果を招く可能性が高いためです。
例えば、見込み客がそれほど多くない小規模企業に「顧客管理ツールの導入」を勧めたとします。本来不要だった顧客管理ツールを取り入れたことで、企業側には余計な経費が発生してしまう、あるいは使いこなせず宝の持ち腐れになってしまう等、リスクが考えられます。
売り手側としても、結果的に契約が短期で打ち切られ赤字になってしまう、悪い口コミが広がってしまうといった、デメリットが生じかねません。
カスタマーサクセスの役割から逆算し、そもそも「商品を売るべきでない」お客さんかの判断をしっかりとおこなうことで、互いにメリットとなる関係性を築くことが重要です。
カスタマーサクセスの視点から、営業や製品開発・カスタマーサポートといった他部署へフィードバックを積極的におこなうことは、組織全体をプラスに改善していく上で欠かせない役割です。
エンドユーザーと最も接点の多い立場であるからこそ、商品やサービス・サポートの良し悪しなど、リアルな顧客からの評価や不満を把握し社内に還元することが可能です。
逆にいえばFBにより良質な商品やサポートを実現することで、顧客の継続率や単価アップといった「カスタマーサクセス自体の目標も達成しやすい環境」が生み出せるようになります。
自社の商品・サービスに対し、信頼性や愛着をもって積極的に利用してくれる層を「ロイヤルカスタマー」といいます。こういった自社のファンとなる層を育てるためには、カスタマーサクセスの役割が必要不可欠です。
ロイヤルカスタマーの創出が上手な例として、代表的な企業に「Apple」があります。市場シェアの割合ではWindowsのほうが圧倒的であるにもかかわらず、根強いファンが数多くいるのは、プロダクト自体のデザイン性やブランド力に加え「企業そのものへのロイヤリティ」があるからだと考えられます。
この「企業へのロイヤリティ」を創出するためには、顧客のニーズや不満をしっかりとキャッチアップして商品の改善・改良を行い、顧客と快適な関係性を築くことが重要です。
最終的に顧客側のほうから「率先してサービスを利用したい」「アップセルを依頼したい」といった状態を作ることこそ、カスタマーサクセスの最も理想的な在り方だと言えるでしょう。
「顧客自身に成果を出してもらうことで、自社商品の価値を見出してもらう」
そんなカスタマーサクセスの原則は、ビジネスのジャンルやサービス形態を問わず、どんな企業にとっても必要不可欠です。またカスタマーサクセスが最大の効果を発揮するためには、組織全体からの理解や協力を得ること、他部署との強固な連携が重要となります。
カスタマーサクセスを自社に設けることで、どういったメリットがあるか、顧客にどのような価値を還元できるかを、まず考えてみてはいかがでしょうか。
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