コラム

事例付き│アップセル・クロスセル・ダウンセルの意味・重要性をわかりやすく解説

2022.04.04

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この記事でテーマとする「アップセル」「クロスセル」「ダウンセル」とは、それぞれ顧客のニーズや段階にあった商品・サービスを提供することで、収益の最大化を目指すためのマーケティング手法です。

用語意味
アップセル顧客に対しより上位ランクの高価な商品・サービスを提案することで顧客単価を上げる方法。
クロスセル顧客に対し関連商品・サービスを提案し、顧客単価を上げる方法。
ダウンセル顧客に下位ランクの安価な商品・サービスを提案することで、失客を防ぐ方法。

企業が長期的な成長を目指す上で、顧客1人あたりの単価アップや継続利用を叶える「アップセル」「クロスセル」「ダウンセル」の実践は非常に有効な手段です。

この記事では、それぞれの概要や重要性・最適な実践タイミングなどを、事例も用いながらわかりやすくご紹介いたします。

【こんな方におすすめ】

  • アップセル・クロスセル・ダウンセルの概要を「事例」で分かりやすく理解したい。
  • 3つの手法が、なぜ重要視されているかの背景・理由を知りたい。
  • アップセル・クロスセル・ダウンセルが成功しやすい実践タイミングを知りたい。
  • 実際にアップセルやクロスセルをおこなっている企業事例を知りたい。

アップセル・クロスセルとは?

アップセルとクロスセルは、ともに顧客単価をアップし収益の最大化をはかる上で有効なマーケティング手法です。

どちらも購入意思の強い顧客、あるいは既存顧客のみにアプローチするため、費用対効果の高い販売施策といった共通項があります。

アップセルの意味

アップセルとは既存顧客に対して、より上位ランクの高価な商品・サービスを提案することで収益の向上を図る販売施策です。

既存顧客にアプローチを仕掛けるため「新規開拓」のコストが発生せず、効率よく単価アップを図れるといったメリットがあります。

またより最適な商品・サービスへ切り替えることで顧客の成果が最大化され、結果的に顧客満足度やロイヤリティの向上に繋がることもあります。

<具体例>

  • 単価1万円の「フェイシャルエステ(顔)」に毎月通われている個人のお客さんに、単価2万円の「全身エステ」プランを提案する。
  • 「400万円の自動車」を検討している個人のお客さんに、よりオプションや機能が追加された「500万円の上位モデルの車」を提案する。
  • 採用活動のため月額15万円で求人掲載サービスを利用する企業に、よりスカウト数や掲載情報量の多い月額30万円の上位プランを提案する。

クロスセルの意味

アップセルが「より高額な商品・サービスへの切り替え」だったのに対し、クロスセルは購入を決定した顧客・あるいは現在サービスを利用中の顧客へ、追加で商品・サービスの購入を促す手法を指します。

顧客の購入意欲が高まっているタイミングで関連商品を提案するため、通常時より高い確率で購入を促すことが可能です。

またアップセルと同様に既存客に対して働きかけるため、低コストで効率的に収益アップをはかることが可能となります。

<具体例>

  • ファーストフード店でハンバーガーを購入する個人客に対し「一緒にポテトはいかがですか?」と追加購入を勧める。
  • 電気屋でパソコンを購入する個人顧客に対し、すぐにインターネット環境でパソコンが使える様「ポケットWi-Fiの契約」を勧める。
  • WEB制作会社に「自社のホームページ制作」を依頼した企業に対し、より集客力を高めるため「インターネット広告」の運用サービスを提案する。

単価を下げることで失客を避ける「ダウンセル」という手法も

アップセル・クロスセルとよく対比で挙げられる施策に「ダウンセル」という方法があります。

ダウンセルとは「購入を見送ろうとしている」「契約を切ろうとしている」顧客に対し、今よりランクの低い安価な商品・サービスを提案する販売手法です。単価を落とすことで顧客の心理的なハードルを下げ失客を防ぎます。

予算オーバーや機能を持て余していることで、購入を悩んでいるお客さんに効果的な手法です。

アップセル・クロスセル・ダウンセルをおこなう目的とは?

アップセルやクロスセル、そしてダウンセルという3種類のマーケティング手法ですが、すべてに共通する目的として「顧客の満足度を高めることで長期利用を促し、LTVの最大化を目指す」というものがあります。

LTV(Life Time Value)とは日本語に訳すと「顧客生涯価値」という意味を指す言葉で、1人の顧客が生涯に産みだしてくれる売上のことを指します。

例えば、サブスクリプションサービスのように「1回だけでは大した利益にならないものの、継続利用してもらうことで大きな収益をあげる」もの、あるいはホットペッパーのような「初回は割引価格で利用してもらい、リピーターになってもらうことで売上を伸ばす」もの等は、まさにLTVを意識したビジネスモデルと言えます。

このようにLTVを高めるには

  • 1回あたりの顧客単価を上げる
  • リピーター(継続利用者)を増やす

といった方法があり、そのためには今回紹介したアップセルやクロスセル・ダウンセルといった施策が非常に効果的です。

企業が継続的に安定した売上を出すためには、新規顧客の開拓以上に「LTVを高める」ための働きかけが重要となります。

そのため顧客のニーズや段階に応じて、その時々に最適な商品・サービスを提案するアップセルやクロスセル・ダウンセルは、企業が長期でビジネスを運営する上で欠かせない手法といえるのです。

アップセル・クロスセル・ダウンセルそれぞれの最適なタイミング

アップセルやクロスセルといった販売手法は、それぞれ適したタイミングで実践することで成功確率を高めることができます。

誤ったタイミングでおこなうと、逆に顧客へ不信感を抱かれてしまうリスクもあるため要注意です。

アップセルの最適なタイミング

アップセルを提案すべきタイミングは、単発商品の場合であれば「顧客が商品・サービスを前向きに検討している」とき、継続サービスの場合は「満足度の高い状態で利用している」ときです。

単発商品の場合であれば、顧客が「〇〇を購入したいけど、どれにしようかな?」と悩んでいるタイミングで、より上位ランクのものを提案するのがおすすめです。「こちらの商品のほうがお値段ははりますが、よりお客さんの求めている結果を得ることができます」とさり気なく勧めることで、高確率で購入に進んでもらうことができます。

定期通販やサブスクリプションのような継続サービスであれば、まずは安価なプランでの顧客満足度を高めることに注力することが重要です。顧客からサービスへの信頼を得たタイミングで「より高い効果を期待できる」上位ランクの商品を提案すれば、スムーズに切り替えを検討してもらうことができます。

クロスセルの最適なタイミング

クロスセルの最適な提案タイミングは、商品の購入を決定した直後・あるいはサービスの継続を決定した直後となります。最も購買意欲の高まっているときだからこそ、関連商品を提案すると「ついでに買ってしまおうか」という心理が働きやすいためです。

例えばダイエットを目的に「自宅でできる筋トレ用品」を購入する顧客に、セットで「脂肪燃焼効果のあるサプリメント」を提案するとします。

「筋トレと合わせてサプリを飲むと、よりダイエット効果が高まりますよ」と筋トレ用品の購入時に勧めるのと、1週間後に同じ商品を勧めるのでは、クロスセルの成功率は大きく異なります。

クロスセルではこの「掛け合わせの販売手法」が非常に重要です。

ダウンセルの最適なタイミング

ダウンセルの最適なタイミングは、お客さんが商品・サービスの価格に対して否定的な反応をしたタイミングです。

「この商品、気になるけど予算オーバーだなあ」
「いま加入してるプラン、値段が高いわりに使いこなせてないんだよなあ」

こういったときに「別の選択肢があること」を提示し、お客さんの購入意欲を再熱させます。

企業に学ぶアップセル・クロスセルの成功事例

それでは最後にアップセル・クロスセルを戦略的に用いることで、継続的に収益を上げている代表的な企業事例についてご紹介します。

Slack(アップセル事例)

代表的なビジネスチャットツールである「Slack(スラック)」は、アップセルによるビジネス拡大に成功している代表的な例といえます。

基本機能はすべて無料プランから使用でき、有料版へ切り替えることで検索可能なメッセージ数の上限や保存できるストレージ容量などをアップグレードすることができます。

Slackのアップセル戦略成功のカギは大きく2つあり、1つは「無料版で顧客の満足・信頼を得ること」、2つ目は「企業が拡大したフェーズでの有料版への切り替えを意図していること」です。

まず気軽に試せる無料プランのタイミングから、使い勝手のいいユーザーファーストなサービスを提供し顧客からの指示を獲得。そしてSlackの利用規模が短期から長期プロジェクトへ、小規模チームから部署全体・企業全体へと拡大する中で、自然と有料版への切り替えを促せる仕組みを構築しているのです。

実際、2017年9月時点で、全世界のアクティブユーザー数は600万人を突破し、そのうち200万人が有料版を利用していると報告されています。

参考元:Slack Passes 6 Million Daily Users And Opens Up Channels To Multi-Company Use

このようにSlackでは顧客にとって価値のある有益なサービスを提供し続けることで、アップセルやサービスの継続利用を無理なく体現しています。

Amazon(クロスセル事例)

クロスセルのわかりやすい事例として有名なのが、Amazon(アマゾン)のECサイトです。

商品ページ

商品ページや商品購入後のページに「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」という関連商品を提示することで、自然なクロスセルを促しています。

顧客側としても「自分で1から関連商品を探す手間」や「買い忘れ」のリスクを軽減でき、互いにメリットのあるシステムを上手く構築している事例です。

まとめ

アップセル・クロスセルそしてダウンセルは、それぞれLTVを目的とした長期の売上成長において欠かせないマーケティング手法です。BtoC・BtoBのサービスに関わらず、どの企業においてもアップセルやクロスセルが常習的におこなえる仕組みづくりを目指していきたいところです。

まずは既存商品やサービスにおける満足値の最大化を図るところから、そして顧客ごとに「どういったタイミングでどういったニーズや悩みが生まれるか」など、カスタマージャーニーマップなどを用いて整理してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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