2022.04.11
企業が「自社の強み」を把握しておくことは、すべての戦略をおこなう上で欠かせない要素です。
この記事では「企業が強みを見つける方法」として、手軽に取り組みやすいマーケティング手法である「VRIO分析」と、フレームワークを用いないより手軽な方法について解説いたします。
「強み分析の概要を把握したい」という方は、まず導入としてこの記事を参考にしていただければと思います。
目次
自社の強みを明らかにするメリットは様々ですが、最も根幹の目的は「企業内で”共通言語”としての強みを認識すること」にあります。
戦略立案やマーケティング、営業活動などあらゆる項目において「自社の強み(と弱み)」を把握しておくことは重要ですが、そもそもすべての社員が共通で「会社の強み」を認識できているケースはあまり多くありません。
例えば「営業」と「マーケティング」の人間で、思い描いている「自社の強み」にズレがあることは往々にして存在するわけです。
そこで各々が世間やクライアントへ発信する内容に相違が生まれない様、全ての発信の基盤となる「会社の強み」について、全社員が共通の認識をもっておくことが重要となります。
企業が自社の強みやブランドコンセプト、目指すべき方向性を明らかにする手法としては「ブランドブック」の作成などがおすすめです。
ブランドブックは自社社員向けに企業が発行する冊子であり、わかりやすい図やストーリーを盛り込むことで、社員全員に共通認識を醸成することができます。
「強み」を明確化しておくことは、社員が能動的に自身の役割を果たす上でも非常に重要です。
目指すべき方向性や顧客へのメッセージが明らかになることで、無駄や迷いのない一貫性のあるパフォーマンスが発揮できるためです。
《社員が強みを把握しパフォーマンスを発揮できる例》
このように「強みの把握」は企業の上位層だけでなく、全ての社員にとって効率的な活動を促すために必要な要素といえます。
より深く会社の強みを明らかにしたい場合、マーケティングのフレームワークを活用するのも有効な手段です。
強み分析手法はいくつかありますが、その中でも比較的取り組みやすいフレームワークとして「VRIO分析」があります。
VRIO分析(ブリオ分析)とは、経済的な価値・希少性・模倣困難性・組織という4つの指標から、自社の経営資源に関して分析をおこなうフレームワークです。
企業はそれぞれ異なる経営資源から成り立っており、保有する資源を活用することで競合優位性を生み出していこうという考えに成り立っています。
Value (経済的な価値) | 対象の経営資源(自社の商品やサービス)は、資源として価値を生み出せているか? |
Rarities(希少性) | 対象の経営資源は、競合他社に比べ希少か?それほど普及していないか? |
Imitability(模倣可能性) | 対象の経営資源は、競合の模倣が困難か(特許取得技術・開発に多大なコストが発生する等)? |
Organization(組織) | 対象の経営資源を活用できる、万全な組織体制は整っているか? |
VRIO分析は、大まかに以下の手順にて進めていきます。
はじめに「強み弱み」を判断したい「自社の経営資源」を洗い出すためバリューチェーンの把握をおこないます。
バリューチェーンとは事業活動を機能ごとに分類し、どの機能で付加価値が生み出されているかを分析する手法のことです。
例えばとあるメーカーであれば「商品企画」→「設計」→「調達」→「製造」→「物流」→「販売」→「アフターフォロー」といった具合です。これらの工程を社内の「経営資源」として評価していきます。
社内の「経営資源」を洗い出せたら、以下の表を用いて実際に「経済的な価値」「希少性」「模倣困難性」「組織」の4つの指標をもとに、要件を満たしているかを評価していきます。
V(価値)が「あり」ならR(希少性)の項目へ。R(希少性)も「あり」なら、次の I(模倣困難性)へ……といった具合に、VRIOの順で判断していきます。
仮にV(価値)が「あり」、R(希少性)が「なし」であれば、次のI(模倣困難性)へは進まず、5段階の競争優位性のうち「競争均衡」に該当する、といった具合です。
とあるメーカーが「自社の広報部門」について、VRIO分析をおこなう例を見てみましょう。
近年多くのメディアへも露出し、売上の大きな一端を担っている広報部門(価値)。
InstagramやTikTokなどSNSの活動にも力を入れ、競合他社に負けない顧客との積極的なコミュニケーションやブランディングの構築も図れています(希少性)。
自社SNSの総フォロワー数は50万人以上、また広報宣伝用の自社キャラクター開発など、同業他社が短期では真似できない広報力も備えています(模倣困難性)。
ただし現在は経験豊富なべテランメンバーのポテンシャルによる成果も大きく、今後より組織として再現性を持たせること・経験の浅いメンバーへの教育が広報部の課題です(組織性)。
この場合、「価値あり」「希少」「模倣困難」であるものの、「組織性なし」に該当するため、競争優位性としては「持続的競争優位」に該当するといえます。
このように「手順1」で洗い出した経営資源をすべて評価し競合優位性を比較することで、自社がどこに優位性(強み)を持っているかを明らかにすることができます。
【おすすめ関連記事】VRIO分析(ブリオ分析) – 自社の経営資源について4つの視点から評価する
マーケティング分析を使わず、より手軽に取り組める「強みを見つける方法」についてもご紹介しておきます。
もっとも手軽な方法は、顧客に「なぜ当社のサービスを選んでくれたのか?」という理由をヒアリングすることです。
お客さんが自社を選んだ理由は、第三者視点でのリアルな「会社の強み」に該当するためです。ヒアリング時はより「具体的」に「競合他社と比べて」どういった点が決め手になったのかを調査するのがポイントです。
ティーン向けのアパレルECサイトにて「当社を選んだ理由」をヒアリングした例
「問い合わせ対応時の電話にてヒアリングをおこなう」「サービス申し込み後のアフターフォロー時にヒアリングをおこなう」など、顧客に漏れなくヒアリングする仕組みを組織内で構築しておくことが重要です。
外部コンサルタントなど、会社の強みを分析してくれる第三者の視点を取り入れる方法もおすすめです。専門家の知見を利用することで、より精密で実際の戦略にも用いられる強みの把握がおこなえるためです。
強み・弱みの分析にとどまらず、それを活かした(あるいはカバーした)戦略の立案や顧客アプローチ・ブランディング強化の方法などもあわせて相談することができます。
自社の強みを分析・把握することは大切ですが、やり方を誤ると正しい結果が得られなかったり、場合によっては事実と相違のある「強み」を認識してしまうケースもあります。
分析にありがちな、2つの失敗例をご紹介します。
よくある失敗例の1つが「社内のみで強みを見つけようとする」こと。なぜなら「鏡に映る自分の姿」と同じで、人も企業も自身の姿を100%俯瞰的に正しく捉えることは困難なためです。
実際、当社がこれまで関わらせていただいた企業さまを見ていると、多くが7~8割ほどは自社で強みを把握されていても、残りの2~3割ほどは相違がある(あるいは強みに気づけていない)といったケースが少なくありません。
そしてそういった企業さまには「自社だけではわからない強みを、第三者の視点から分析してほしい」という、健全な危機感を持っている経営者の方が多いように思います。
社内で強みの分析をおこなったのちはぜひ自社だけで完結せず、顧客や第三者の声を取り入れるなどの工夫をおこなってほしいと思います。
顧客に「自社の強み調査」をおこなう際、気を付けてほしいのが問いの投げかけ方です。「当社の強みを教えてください」というヒアリングの仕方は、強み分析においてあまり有効ではありません。
というのも「強みを教えてください」で得られる回答は「一般論」であることが多く、顧客自身があなたの会社を選んだ理由とは限らないためです。
「セブンイレブン」を例に考えてみます。
仮に「セブンイレブンの強みを教えてください」と大衆顧客へヒアリング調査をおこなった場合、以下の様な回答が寄せられるかもしれません。
しかし実際に「企業としての権威性」であったり「店舗数の数」を理由に、セブンイレブンで商品を買う顧客はいるでしょうか?きっと多くが「家や職場から近いから」「好きな商品があるから」「深夜でもやっているから」といった、より属人的な理由で利用しているはずです。
このようにヒアリング調査の際は、「会社の強み」ではなく顧客が「あなたの会社を選んだ理由」にフォーカスして、質問することが重要です。
今回は「自社の強みの見つけ方」をテーマに、代表的なフレームワークである「VRIO分析」や、より手軽に取り組める方法などをご紹介しました。自社の強みを明確化し全社の共通項にすることは、社員の指針を明確化し企業が成長していく上で重要なことです。
本記事が貴社にとって「強み分析」に取り組む、1つのきっかけとなれば幸いです。
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