2022.06.06
卸売業者や小売業者などを介さず、メーカーが直接消費者に製品を販売する「D2C」。消費者と直接接点を持てることで、これまでに無い新たな価値提供やブランド戦略が仕掛けられるモデルとして、D2Cは近年高い注目を浴びています。
「D2Cについて改めて概要を理解したい」という方のために、その概要や市場規模拡大の背景・企業事例などをわかりやすく解説いたします。
目次
D2C とは「Direct to Consumer」の略であり、メーカーが自社の商材をECサイト上で
直接消費者向けに販売するモデルのことです。
これまでの一般的なBtoCビジネスでは、メーカーや製造会社がなにか商品を売りたい場合、
・スーパーマーケットやコンビニといった「小売店」に販売を依頼する
・Amazonや楽天・Yahoo!といった「大手ECサイト」に商品情報を掲載し、販売する
など「『流通』は別の企業やサービスの力を借りる」というケースが一般的でした。
対してD2Cではメーカーが小売店や社外のECサイト等を介さず、自社サイトを通して顧客とダイレクトに商品の販売をおこないます。例えば「完全栄養食」として話題の「BASE FOOD」は、D2Cビジネスの代表例です。
引用:BASEFOOD 公式
「1つで30種類の栄養素が取れるダイエットフード」として、基本的には小売り等に頼らず自社ECサイトでの販売に注力しているBASEFOOD。集客方法もリアルではなくWEB広告やSNSを中心におこなっているのが特徴です。
健康志向のユーザーに刺さる巧みなブランディング戦略により、2021年8月時点でのシリーズ累計販売数は1,000万食を突破しています。これは自社サイトで販売することにより、より強いメッセージ性やブランドの世界観を顧客にうまく訴求したことが要因でしょう。
「小売りなどの業者を挟まない」という点では、例えばユニクロや無印良品のような自社製造・自社販売のビジネスモデルもD2Cと重なる部分があります。しかし結論からいえば、ユニクロや無印良品はD2Cの括りには入りません。
D2Cはあくまで自社ECなど「オンラインでの販売」を主戦場としているのに対し、ユニクロや無印良品はネット通販もおこないつつ「リアル店舗」での販売がメインです。
このような卸売業者や小売業者に頼ることなく、自社のショップを構えて販売まで一貫でおこなう業務形態は「SPA=製造小売業」と呼ばれます。
両者は販売形態こそ異なりますが、生産者が消費者に直接商品を届けられる点で共通項があります。
スマートフォンやSNSの普及に伴いユーザーの消費者行動が著しく変化している昨今、D2Cの国内市場はその規模を拡大し続けています。
「売れるネット広告社」が2020年に実施した調査によると、デジタルD2C市場は年々成長しており2025年には3兆円規模へ到達すると推測されています。
D2Cブランドが飛躍的な広がりを見せる背景としては、ネット中心にシフトしつつあるユーザーの消費行動と相性が良いこと、そしてこれからの消費行動を担っていくミレニアル世代・ Z世代へアプローチしやすいビジネスモデルであることが考えられるでしょう。
「D2Cビジネス」ではブランド側が自社チャネルやSNS等を通じて消費者と直にコミュニケーションを図り、独自の世界観を発信することが可能です。これは情報リテラシーが上がりユーザーがスマートフォンを日常的に操作する、現代顧客の消費行動と非常に親和性が高いといえるでしょう。
また1981年以降にうまれた「ミレニアル世代」「Z 世代」といわれる若年顧客層は、プロダクトそのものではなく「ブランドが発信する世界観」に強く共感し、購買行動を促されるという傾向にあります。
そのため直接ユーザーと接触でき、独自の世界観や新たな価値を提供できるD2Cビジネスは、いまの消費者の傾向やニーズに非常に合致したモデルということができるのです。
改めてこれまでのビジネスモデルと比較した、D2Cというビジネスモデルがもつメリットについて見ていきましょう。
SNSやWEBメディアという媒体を駆使して、自分たちが本当にユーザーへ伝えたい製品の魅力や世界観を提供できる点はD2Cならではの大きなメリットです。
自社サイトやSNSといった ”制限のない自社媒体” にてPRや販売活動をおこなえるため、より長期的でストーリー性のある訴求が可能となります。
直販モデルとなるD2Cでは、仲介業者を利用しないため「中間マージンが発生しない」というメリットもあります。
また従来なら広告代理店へ依頼していたテレビCMやチラシといった「広告費」等も、WEB媒体かつインハウスで手がけることで、大幅な経費削減を図ることが可能です。リアル店舗を持たない分、家賃や人件費も抑えられます。
企業が手数料や経費そのものを削減できるのはもちろん、商品の低価格化を図ることは結果的にユーザーにとっても大きなメリットとなるでしょう。
広告から販売までを自社で担うことにより、顧客の購買データを社内に蓄積することが可能です。
・購買層のペルソナ
・購買にいたるまでの行動データ
・個人の購買データ
・リピート率
といった有用なデータを分析することで、より顧客ニーズに合致した新たな施策の実行や商品開発等、起業を伸ばしていくための取り組みに活かすことができます。
またオンラインで顧客データを取得することにより、よりパーソナライズされた施策を打つことも可能です。
例えば自社サイトにて「フォーマルなジャケット」を購入されたお客様に対し、ジャケットに似合うシャツやパンツの情報をメルマガやSNSで発信する、リアル店舗にて提案するといった具合です。
企画から流通・販売までをすべて自社で担うため、結果に応じてすぐに改善施策や新たな企画を取り入れられる「PDCAの回しやすさ」もD2Cのメリットです。
小売店や広告代理店といったいくつかの業者を巻き込んだ状態は、意思決定の数が増える分、どうしてもビジネスの機動力は落ちてしまいがちです(ただしD2Cに比べ初期投資がかからず分野のプロに一任できるといった魅力があります)。
その点、D2Cではすべての意思決定や施策の遂行をインハウスでおこなうことで、より短期的に目標設定から実行・改善までのプロセスを回すことが可能です。
D2Cビジネスの飛躍は国内にとどまらず、世界中でその市場規模は拡大し続けています。
今回は書籍「D2C 世界観とテクノロジーで且つブランド戦略」を参考に、D2Cの代表的な成功事例をご紹介します。
まず1つめにご紹介するのが、2人の女性によって2015年に創業されたスーツケースD2Cブランド「Away」です。
初年度の受注額は1200万ドル(約13億円)、2年目には10万個の販売を達成するなど大きな成功を遂げているD2Cモデルの代表的な企業です。
「Away」が飛躍的に成長した要因には「ただスーツケースを売る」のではなく「旅のある生活」そのものの魅力を訴求している点にあります。
・自社サイトではスーツケースと共に旅を楽しんでいる女性の写真をギャラリーとして掲載する。
・思わず旅したくなるような風景写真をInstagramでアップする。
・旅のエピソードや魅力をまとめた紙雑誌「HERE」を発行する など。
商品そのものを売り込むのではなく「旅に出かけたくなるきっかけ」をユーザーに提供することで、ミレニアル世代以下に刺さる唯一無二のスーツケースブランドの地位を確立しました。
公式サイト:https://likeshop.me/away/
公式Instagram:https://www.instagram.com/away/
2つ目にご紹介するのが、男性向けED薬をおしゃれなデザインで展開するD2Cブランド「hims(ヒムズ)」です。
薄毛やED・肌トラブルといったコンプレックスに関与する商品を、独自のオシャレな世界観やパッケージで展開したことで「これまでのコンプレックス商材とは一線を画すブランド」として話題に。
このブランド戦略が功を奏し、本来「隠したい」はずのEDや薄毛といった悩みを抱えるユーザーが、積極的にSNSで「himsの商品を愛用していること」をシェアするという、前代未聞の現象を生むようになりました。
またhimsの「オンラインでコンプレックス商材を販売する」という仕組みが、店頭でそういった買い物をしたくないという若者のニーズと上手く合致した点も成功の大きな要因でしょう。
EDなど人々の悩みをあえてオープンかつカジュアルに持ち出せる世界観を創り上げたことで、顧客の価値観や行動そのものを変えたD2C事例です。
公式サイト:https://www.forhims.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/hims/
若者世代の消費行動やニーズと相性の良いD2C(Direct to Consume)ビジネスは、今後もより多くの企業が参入するなど市場規模の拡大が見込まれます。
D2Cモデルを成功させるためにはプロダクトをただ提供するだけでなく、モノを含めた体験や独自の世界観を訴求することが重要です。またオンラインの手法に固執せずリアル店舗での施策もうまく絡めることで、顧客のロイヤリティをさらに高めることも可能です。
自社に特定の商品をお持ちなのであれば、D2Cに取り組むことを検討してみても良いかもしれませんね。
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