2022.08.08
常に顧客から選ばれ続ける企業であるためには「顧客ニーズ」を適切に捉えた、商品開発やセールス・マーケティング活動をおこなうことが必要不可欠です。
ただし顧客ニーズの中には、表面的にはわからないもの、ときには顧客自身も自覚していない、深層的なニーズが隠れている場合もあります。
この記事では「顧客ニーズとは」をテーマに、あらためてその概念やニーズを的確に見つける方法について解説します。
顧客ニーズとは、顧客の中にある「理想」と「現実」とのギャップを埋めたいという欲求のことを指します。
多くの人が何か物を購入したり、あるいはサービスに申し込んだりする背景には、必ず「何らかの問題を解決したい=理想と現実を埋めたい」という思いが存在します。
そのため企業が顧客により好んで商品やサービスを利用してもらうためには、顧客が深層的に欲しているものは何か・どんな課題を感じているかというニーズを、常にキャッチし続ける努力が必要不可欠です。
この顧客ニーズには、顧客に自覚があり表面的に確認できる顕在化されたニーズと、顧客自身も自覚できていない潜在的なニーズの2種類があります。
顧客のニーズは
の大きく2つに分けることができます。
顕在ニーズとは「〇〇が欲しい」「▲▲が食べたい」など、いわゆる言葉にできて、顧客本人も認識している需要や要求のことを指します。
一方の潜在ニーズは、顧客本人に自覚はないものの、実は無意識のうちに欲しているもの・誰かに指摘されることで気づく欲求を指します。
顕在ニーズ | 顧客本人が「自覚している」欲求のこと。 |
潜在ニーズ | 顧客本人に「自覚はないが存在する」欲求のこと。 |
例えば「仕事で出世したい」という顕在ニーズがあった場合、その背景には「出世することで世間から認められたい」「金銭的に裕福になって不自由ない暮らしがしたい」「女性から尊敬されたい、モテたい」といった「潜在ニーズ」が隠れていることがあります。
あるいは、スマホを触っていた時にたまたま気になる広告があり、思わずそのリンク先から商品を購入した、あるいはアプリをダウンロードした経験のある方も多いのではないでしょうか。ポストに投函されたチラシやテレビCMを見て、思わず商品が欲しくなったりサービスに申し込みたくなったりするのも同様です。
そういった「自覚はないけれど、広告を見たり誰かに言われたりして気づかされた欲求」も、顧客の潜在ニーズの一例といえるでしょう。
ニーズに対し、より具体的な欲望のことを「ウォンツ」といいます。
ニーズとウォンツとの関係性の例をあげると、以下のようになります。
ニーズ | ウォンツ |
空腹を満たしたい | カレーライスが食べたい |
移動時間を効率化したい | タクシーに乗りたい |
暇をつぶしたい | ゲームセンターに行きたい |
両者の関係性をあげると、顧客のニーズを満たす(理想と現実とのギャップを埋める)ために、具体的な手段として湧きあがる欲求が「ウォンツ」となります。
顧客の心理を理解し、真の要求に応えるためには、表面的な「ウォンツ」にとどまらず、そこから導かれる「ニーズ」を深ぼることが重要です。
例えば、「ダイエットのためにトレーニングジムへ通いたい」という女性がいたとしましょう。
一見、ジムへ入会することで彼女の要望は満たされるようですが、仮にジムに通っても体重が変わらなければ、彼女にとって目的は達成されません。というのも、女性にとっての真のニーズは「ダイエットをして体重を減らすこと」であり、「ジムへ通うこと」はあくまで彼女にとって「1手段=ウォンツ」に過ぎないためです。
そう考えるとダイエットジム以外にも、「食事制限をする」「自宅でトレーニングをする」といった、彼女にとってより望ましい手段が見つかるかもしれません。
あるいは「ダイエットをすること」の潜在的なニーズが「痩せて異性からモテるため」なのであれば、いまの外見のままで「内面を磨く」「お化粧を練習する」「着やせするファッションを研究する」といった、そもそもダイエットをする以外の手段を検討することもできます。
このように「顧客が本当に何を求めているか」というニーズをキャッチすることで、企業は顧客の隠れた本当の欲求に応えられる、施策やサービスを開発することが可能となります。
表面化している顧客の「ウォンツ」から、適切にニーズを洗い出す方法について解説します。
通常、顧客が発する内容はすべて、ニーズではなく「ウォンツ」である場合が多いです。というのも、顧客自身がそもそも自身が「潜在的に何を求めているか」「何に課題を感じているか」を把握できていないケースが大半だからです。
ずばり、ウォンツからニーズを見つけるには「ウォンツに対し『なぜ』を軸に、質問を繰り返す」という方法が有効です。
以下で詳細を説明します。
■顧客Aさんのウォンツ=「ドラム式の洗濯機がほしい」
顧客A「いま、ドラム式の洗濯機を買いたいんですよね」
企業「なぜ、ドラム式の洗濯機が欲しいんですか?」
顧客A「ドラム式の洗濯機って、衣服を入れるだけで乾燥までしてくれるじゃないですか。洗濯物を干す手間を省きたいなと思って。」
企業「なぜ、洗濯物を干す手間を省きたいんですか?」
顧客A「子どもが小さく育児も大変なので、なるべく家事の時間を短縮したくて」
企業「なるほど。それでは子どもさんを託児所に預けて、育児の時間を短縮してみてはいかがですか?」
顧客A「うーん、それも1つの方法ですが、やっぱりドラム式の洗濯機が欲しいです」
企業「それは、なぜですか?」
顧客A「子どもの面倒を見るのは可愛いですが、正直「家事」はめんどくさいので、ラクがしたいからです」
企業「なるほど。それでは、食器洗い機を購入して、食器を洗う時間を短縮するのはいかがでしょうか?」
顧客A「それもありですが……やっぱりドラム式の洗濯機が欲しいです」
企業「それは、なぜですか?」
顧客A「実は冬の寒い時期にべランダに出て洗濯物を干す時間が、とても苦痛なんです。そのため、同じ家事のめんどくささを解消するなら、食器洗い機よりドラム式の洗濯機が欲しいです」
このように「ドラム式の洗濯機が欲しい」のウォンツを深ぼっていくと、顧客Aさんのニーズは「めんどうな家事の時間を削減すること」、さらに言えば「洗濯物を外(ベランダ)に出て干す作業を無くすこと」が、真のニーズであるとわかります。
このように顧客ニーズを適切にキャッチすることは、より顧客に響く最適な営業提案や商品開発をすることに繋がります。
【顧客Aさんに、ニーズを踏まえて提案をおこなう例】
・子どもさんを保育所に預けて、時間の効率化を図ってみては? →「響かない」。 ・家事の短縮のため、ルンバを購入してみては? → 気になるが、室内の家事はそこまで億劫でないため「保留」。 ・ハウスキーパーさんを雇って、代わりに洗濯物を干してもらっては?→「アリかも」。 ・旦那さんのお小遣いをアップする代わりに、洗濯物を「干す」作業だけお願いしてみては?→「それが一番いい!」。 |
あくまで簡易的な方法ではありますが、是非皆さんも顧客ニーズを把握するため「ウォンツから質問をして深堀する」ことを実践してみてください。
先述したとおり、企業が顧客から選ばれ続けるプロダクトやサービスを提供するためには、常に顧客のニーズを適切にキャッチし続けることが重要です。
そしてこれは大企業に限らず、中小あるいは個人経営の店舗であっても同様のことがいえるでしょう。
最後に「顧客ニーズを理解する方法」として、4つのアイデアをご紹介します。
顧客ニーズを把握するためにおすすめな方法、1つ目は「カスタマージャーニーマップを作成すること」です。
カスタマージャーニーマップとは、企業の製品・サービスを利用する顧客の消費行動の一連を、時系列で視覚化したものを指します。
仮にあなたが「料理教室」に申し込むまでの購買プロセスは、以下の通りです。
このように顧客の購買プロセスを可視化することで、各フェーズにおける顧客のニーズを把握し、適切な手を打てるようになります。
2つ目の方法は「口コミやSNSからニーズをキャッチする」という方法です。
各商品・サービスのレビューやTwitter・InstagramといったSNSツール、ヤフー知恵袋のような書き込み式のお悩み相談などは、対面ではわからない、顧客のニーズをキャッチする手段として有効です。
対企業向けの飾られた意見ではなく、あくまで日常の中の本音をキャッチすることができるため、より真実に近いフィードバックをリアルタイムで得ることが可能です。
3つ目の方法は、シンプルに顧客アンケートをおこなうことです。主に既存顧客に向けて、自社の商品やサービスに関する本音を回答してもらいます。
ただしアンケート調査は顧客の声を広く回収できる反面、データを鵜吞みにするのは危険という側面もあります。というのも「対企業向けに、表面的に作られた意見である」「不真面目に回答している」「顧客自身、自分のニーズに気づかないまま回答している」といった可能性も考えられるためです。
アンケートによるニーズ調査の場合、まずは「どういった問いかけをすれば顧客の本音を引き出せるか」質問の内容や言葉選びをよく吟味すること、そして回収した声をどの塩梅まで自社の施策に活かすか、吟味することが重要です。
4つ目の方法は、検索エンジンを用いたキーワード調査です。キーワード調査は、手軽に顧客が求めているニーズを把握する上で有効な手段です。
例えば「京都に観光したい人」の、より詳しいニーズについて知りたいとします。「京都 観光」に関するキーワードとそれぞれの検索ボリュームを調査すると、以下のような結果となりました。
キーワード調査より、そもそも検索エンジンで1か月に20万人以上の人が「京都観光」について調べている・興味を持っていることがわかります。
また同じ「京都の観光情報」を調べている層の中でも
といった、様々なニーズがあることを、キーワード調査からは読み取ることが可能です。検索ボリュームが多い=「それだけ、そのキーワードを検索している人が多い」ということなので、特に需要の多いニーズを選別する手段としても有効です。
今回は「顧客ニーズとは」をテーマに、2種類の二ーズの概要や「ウォンツ」との違いについてお話ししました。
【今回のポイント】
ぜひ本記事も参考にしながら、顧客のニーズを的確にキャッチし、本当に顧客の欲求に基づいたサービスや商品の開発・提供・マーケティング戦略に臨んでいただければ幸いです。
CX Value Labでは、今回のような顧客理解・マーケティング戦略に関するコラムを発信しております。ぜひご覧ください。
→ 当社代表の廣瀬が監修した「売上が上がるフロントオフィスの設計図」の詳細
まずは資料請求から。無料の詳しい資料をお送りいたします。
以下のボタンをクリック!