2022.08.19
「オムニチャネル」とは、様々な販売経路・顧客接点をもち、それぞれの顧客情報を連携させることで、価値ある顧客体験(CX)の提供をおこなうマーケティング戦略を指します。
企業と顧客との接点が多様化している昨今、顧客とより密接な関係を築くためにオムニチャネルへの注目が高まっています。
この記事では「オムニチャネル」の概要や実際に取り組んでいる企業事例について、わかりやすく解説いたします。
オムニチャネルとは、ユーザーが商品やサービスを購入する間での販売経路(=チャネル)を複数もち、各チャネル間にて顧客のニーズや購買データを共有することで、チャネルを超えて顧客に一貫性のある最適な体験を提供することです。
オムニは「すべての、あらゆる」という意味を、チャネルは「経路」という意味をもち、ここでは「消費者と接点を持つ場所・手段のこと」を表します。
「消費者と企業とが接点を持つ場所・手段=チャネル」の例としては、以下のような物が挙げられます。
例えば、実店舗で購入した商品のデータを各チャネルで共有し、家に帰ってから「購入商品と合わせて買いたいおすすめアイテム」の情報をスマホアプリに通知・閲覧できるといった施策は、オムニチャネルが活用された1つの事例です。
オムニチャネルが実装されることにより、ときには「SNSで閲覧した商品をそのままECサイトに飛んで購入する」「リアル店舗で試着した商品を、オンライン経由で自宅へ配送してもらう」など、顧客の心境や行動にあわせて、自由で境目のない購買行動を実現することができます。
これは、商品やサービスそのものの満足度だけでなく、一貫した顧客の体験価値=CXを高めることで、顧客から選ばれ続ける企業・サービスであり続けることにもポジティブな影響をもたらします。
オムニチャネルの理解をより深めるためには、誕生までの歴史を振り返ることが重要となります。
オムニチャネルの前進として把握すべき概念には「シングルチャネル」「マルチチャネル」「クロスチャネル」の3種類が存在します。
マーケティング施策の段階としては、基礎の概念として「シングルチャネル」があり、そこから「マルチチャネル」→「クロスチャネル」→「オムニチャネル」と発展してきました。
チャネル名 | 概要 |
シングルチャネル | 販売経路・顧客接点が1つに限定された販売モデル |
マルチチャネル | 実店舗やECサイトなど、複数の顧客接点をもつ販売モデル |
クロスチャネル | 複数の顧客接点をもち、各販路の情報が一元管理されている販売モデル |
オムニチャネル | 複数の顧客接点をもっており、また各販路の情報を一元管理し組み合わせることで、質の高い顧客体験の創出に取り組んでいるモデル |
まず、売り手と買い手との接点が1つに限られている、従来の販売モデルを「シングルチャネル」といいます。商品の販売方法が「実店舗のみ」「ECサイトのみ」など、限定されている状態を指します。
このシングルチャネルに対し「複数の販売経路」を持っている状態が「マルチチャネル」です。
例えば、同じ商品に対して「リアル店舗と自社サイトの両方で販売している」「ECサイトでの販売に加え、訪問販売もおこなっている」など、販売活動をおこなうチャネルを2つ以上持っている状態を表します。
マルチチャネルの普及により「いままで遠方でリアル店舗に足を運べなかった顧客がECサイトから商品を購入」する、あるいは「通販サイトで気になる商品をチェックし、リアル店舗で実物を見てから、納得感をもって購入する」といった多様な購買行動が実現し、より広い層の顧客に自社商品やサービスを利用してもらうことが可能となりました。
マルチチャネルの普及により人々の購入経路が広がった一方、このときはまだ、それぞれのチャネルが独自に働いている状態でした。
このマルチチャネルを発展させ、よりチャネル間の結びつきを強固にしたものを「クロスチャネル」と呼びます。クロスチャネルでは、各販路で得た顧客情報を横断させ、一元管理することで、すべての窓口にて一貫性のあるサービスを提供することができます。
例えば、ショップにてお気に入りのスニーカーを発見したものの、ちょうど自分に合うサイズが在庫切れだったとします。このときリアル店舗で試着・購入だけを済ませ、後日希望のスニーカーを家に配達してもらうといった「リアル店舗」と「オンライン」とを組み合わせた販売手法はクロスチャネルに該当します。
あるいは逆に、スマートフォンの通販アプリで購入・お気に入りした商品を、自宅ではなく実店舗で受け取ることができる、あるいは実際に手に取ったり試着したりできることも、クロスチャネルを用いた施策の1例です。
各販売経路にて顧客データを共有する「クロスチャネル」の発展により、人々の購買活動はよりスムーズなものへと変化を遂げました。
その一方、人々の多様化する価値観や購買行動に対応するため、企業はさらなる利便性を実現し、質の高い顧客体験の提供を求められるようになりました。
そこでクロスチャネルの進化系として生まれたのが、本記事のテーマとなる「オムニチャネル」です。オムニチャネルでは、単純な「販売経路」に限らず、様々な顧客接点間で顧客データを連携することにより、快適な購買活動を実現します。
例えば、オーガニックブランドの実店舗にて「ハンドソープ」や「シャンプー」といった商品を購入した顧客に関して「いつ・何の商品を購入したか」というデータを実店舗とオンラインとで連携するとします。
そのデータをもとに購入したハンドソープやシャンプーの中身が無くなりそうなタイミングで「次回購入のアナウンス」をメールやアプリで通知することで、ユーザーの購入漏れを防ぐと同時に、自然と商品購入を促すことが可能です。
また前回は店舗にて購入したそれらの商品を、自宅からオンラインで手軽に購入できるようECサイトの案内を送る・AIが購入履歴をもとに、自動でそのユーザーにあったおすすめ商品(トリートメント等)を紹介するといった施策も、オムニチャネルを活用している事例の1つです。
このようにオムニチャネル化を図ることで、各チャネルの垣根を越え、顧客によりシームレスでストレスの無いサービスを提供することができます。
オムニチャネルを実践することで、素晴らしい顧客体験を実現している企業の事例についてご紹介します。
オムニチャネルを実践している事例として、代表的な企業に「スターバックスコーヒー」が挙げられます。
ただ「美味しいコーヒー」を提供するだけでなく、快適な空間や非日常感など「ワクワクする顧客体験の創出」を提供し続けているスターバックス。その秘訣として、独自のスマホアプリケーションとリアル店舗・ホームページとを連携させた、シームレスなサービス提供の存在が挙げられます。
例えば、スターバックスの独自アプリ「Mobile Order & Pay(モバイルオーダー&ペイ)」では、事前にアプリにて注文のオーダーと決済をおこない、所定の店舗へ商品を受け取りに行くことが可能です。あらかじめ注文・決済ができることで、受け取りの待ち時間や支払いの手間を省き、また人目を気にすることなく自分のペースでオーダーを決めることができます。
引用元:スターバックス
またアプリには事前に現金チャージをすることで、支払いに応じて特典がもらえるリワードポイントが付与されたり、あるいは簡単に周辺のスターバックス店舗が検索できたりといった、ストレスの無い顧客体験を実現するための様々な機能が実装されています。
様々なチャネルを連携させることで価値ある顧客体験を提供している、オムニチャネルの代表的な事例といえるでしょう。
もう1つ、オムニチャネルの代表例として「無印良品」があります。
2013年という早いタイミングから、スマホアプリ「MUJI Passport」の提供をスタートした同社。MUJI Passportとはポイントカードのように使える独自アプリであり、店舗へのチェックインでマイルを貯めたり、欲しい商品の在庫がある店舗を検索できたりと、アプリ経由でリアル店舗へ総客する仕組みづくりが実装されています。
引用元:MUJI passport
また無印良品では来店時だけでなく、顧客が「無印良品」に関心を持つ機会の創出に力を入れています。
MUJI Passportを起点に、ECサイトやメルマガなど様々なチャネルから顧客との接点をもち、また売上の9割を誇る実店舗を充実させることで、高い顧客体験を提供し続けることに成功しています。
日本企業の中でも早いタイミングからオムニチャネル施策に着手し、今なお素晴らしい顧客体験を追求し続けている代表的な事例です。
近年、多くの企業が意識的に取り組んでいるマーケティング施策「オムニチャネル」に関して、事例を交えながら解説しました。
一朝一夕では実現の難しい施策である一方、長期的に取り組むことで、素晴らしい顧客体験の提供を目指すことができます。長期にわたり顧客へ選ばれ続ける企業・サービスであるためにも、ぜひ複数のチャネルを活用し顧客データをうまく連携させた、オムニチャネルの実装に向けて取り組んでみてはいかがでしょうか。
CX Value Labでは今回ご紹介したオムニチャネルをはじめ、顧客にとって価値ある体験を提供するためのマーケティング戦略支援をおこなっております。
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