2022.09.21
CXMとは、顧客が商品やサービスの利用で感じる機能的な価値だけでなく、「満足感」や「感動」といった「体験(CX)から得られる価値」の向上を目指す手法を指します。
優れた体験価値の提供により中長期的に顧客と良好な関係を築き、収益化する仕組みを作ることがCXMの主たる目的です。
この記事では、まだ比較的新しい概念である「CXM」について、その概要や重要性・CXMを取り入れたサービス事例などをご紹介します。
CXMとは「Customer Experience Management(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)」を略した言葉であり「顧客体験管理」と訳されます。
コロンビア・ビジネススクールのバーンド・H・シュミットが提唱した概念であり、優れたCX(顧客体験)を提供することで顧客と企業との関係を育み、収益性の向上を図るための手法として注目されています。
当サイトでも度々取り上げている「CX(顧客体験)」について、改めて簡単に確認したいと思います。
CXとは、顧客が商品を認知してから購入・利用・購入後にいたるまでの一連の中で、企業やプロダクト・サービスとの接点にて体験する、感情的・情緒的な価値を指します。
例えば、顧客がカフェに訪れて1杯のコーヒーを注文するとき、彼らが求めているのは必ずしも「美味しいコーヒーを飲むこと」だけとは限りません。
こういった他店にはない魅力的な体験を得るために、自然とそのカフェに足を運んでいる顧客がいるとすれば、これは「優れたCX(顧客体験)」を提供している成功例と言えるでしょう。
CXの向上に向け戦略的に社内システムを構築することは、競合との差別化を図り、顧客と長期的に良好な関係を構築するための要となります。そして、そのCXを企業が計画的に実践していく上で重要な仕組みづくりに欠かせないのが、今回テーマとする「CXM(顧客体験管理)」というわけです。
CXM(顧客体験管理)の概念が注目を強く浴びるようになったのは、実はまだ比較的最近のことです。
スマートフォンやインターネットの普及により、顧客が自ら主体性をもって情報獲得が可能となった現代。ユーザーは自ら能動的に必要な情報を調べ、商品やサービスを比較検討し、好みに応じたものを容易に選別するようになりました。
顧客の情報リテラシー向上に伴い価値観や趣向が多様化する中で、消費者のニーズはますます複雑化し「ただ魅力的な商品を販売するだけ」では、顧客の心をつなぎとめることは難しくなってしまったのです。
こういった背景を受けて注目を浴びるようになったのが、CX(顧客体験価値)の向上による、競合他社との差別化でした。
顧客が本来買おうとしているものは、一連の顧客接点の中で得られる「快感」「癒し」「楽しさ」「優越感」といった経験価値であることに着目し、顧客に最適な体験を提供することで、長期的に良好な関係を育むことに焦点を当て始めたのです。
そして、こういった「優れた顧客体験の提供」を企業を挙げて戦略的に取り組んでいくために生まれたのが「CXM」という概念でした。
など、企業として永続的に良質な顧客体験の提供が実現できるための仕組みづくりをおこなうことに注目が集まるようになったのです。
CXMとよく比較されるマーケティング用語に「CRM」があります。CRMには「概念」と「ツール」としての2つの解釈がありますが、ここでは前者である概念としてのCRMを取り上げてお話ししたいと思います。
CRM(Customer Relationship Management)とは「顧客関係管理」といわれるマーケティング用語であり、顧客情報を的確に管理することで良好な関係を構築し、長期的な売上や利益向上をはかる “仕組み” のことを指します。
例えば、以前店舗で「リクルートスーツ」を購入してくれた22歳男性のAさんがいたとします。
Aさんの購買データ(購入した商品・単価・時期)や、基本情報(年齢や性別・地域など)を活用することで
といった風に、Aさんの顧客情報に沿った、Aさんのためにカスタマイズされたアプローチや接客をおこなうことが可能となります。
このように、顧客データを活用し優れた顧客体験の提供を図る概念が「CRM」です。
ともに「魅力的な顧客体験の提供」に着目しており、分類の難しい「CRM」と「CXM」。
明確な差別化は難しいものの、両社の違いは顧客関係の構築を「顧客情報のデータベース化に着目しておこなうか」と「顧客の感情・心理に着目しておこなうか」の差であるといわれています。
CRMが顧客の過去のデータを詳細に蓄積することで、優れたパフォーマンスに生かそうとするのに対し、CXMでは顧客の「リアルな現場の声」に耳を傾けます。
「このタイミングでこのアプローチを仕掛けたとき、一体顧客はどういった感情になって、どういった行動に移りたくなるのか」という具合に、CXMでは各プロセス毎にユーザー視点でプロダクトやサービスへの感情を思考し、その行程を緻密に積み重ねることで最良の顧客体験の実現を図ります。
CRMとCXMとは前提として同じ「最良の顧客体験の提供」を軸にしており、その中でもCRMの要素を活用しながら「顧客の感情」をさらに深掘りする手法が「CXM」であると言えるでしょう。
ここまで「CXM」の概念について深堀りしてきましたが、実際にCXMの概念を踏まえ、より顧客の感情に寄り添った顧客体験の提供に努めているサービス事例についてご紹介します。
昨今、注目を浴びているのが「物を販売しない『体験』に特化した店舗」の展開です。
体験型店舗とは、気になっている商品やサービスを実際に「触れて」「見て」「味わって」といった体験することができる施設のこと。
気になっていた商品を比較検討したり、新商品に興味を持ったりという、見込み顧客の獲得と「優良な顧客体験」の提供に着目し、最近では多くの企業が導入に取り組んでいます。
2021年1月にオープンした、体験型のアウトドアストア「UPI 表参道」。
店舗内にはリアルな自然(たくさんの植木や水の流れる小川など)が再現され、そのスペースをつかって、実際に店舗内のアウトドアグッズを試すことができます。
キャンプ道具を使った火起こし体験やハンモック体験、ナイフで木を削ってみることも可能です。
実際に道具に触れることで使い勝手を試せるのはもちろん、都会の中で「アウトドアの面白さ」に気づくことができる、魅力的なCXの実践例といえます。
顧客の日常に介入し、「日々の中へワクワクを提供」することに取り組んでいる企業もあります。
国内・海外を問わず、様々な旅行プランやツアーを提供する「クラブツーリズム」。同社が提供する、ちょっと面白いサブスクリプションサービスが「グラブツーリズムPASS」です。
会員になることで「写真」「歴史」「海外旅行」「グルメ」など、同じ趣味の人たちと「サークル活動」という形で交流をはかることができ
など「旅行当日」だけでなく、その前後や日常からワクワクする経験を楽しむことが可能です。
一方的なサービスの提供ではなく、顧客同士の交流によって優れた体験を提供するCXの成功事例です。
・日常の中にちょっとした”非日常感”を演出する
・利用するだけで気分が高揚したり、自尊心が満たされたりする
そんな顧客ロイヤルティの向上に着目し、顧客に非日常的でスペシャルな体験を提供することも、顧客体験提供の要素として重視されています。
ただ「美味しいコーヒー」を提供するだけでなく、快適な空間や非日常感など「ワクワクする顧客体験の創出」を提供し続けているスターバックス。
全国すべての店舗は、各店のオーナーがその土地ごとの顧客ニーズや出店背景を基に、一から店舗デザインや内装・家具などを決定しています。店舗ごとにコンセプトや個性が異なるため、全店舗で違う空間体験を得られるのが同社の特徴です。
その居心地の良い空間やおしゃれなヴィバレッジにより、ブランディング戦略において、国内カフェチェーンの中でも不動の地位を築いているといえるでしょう。
また居心地の良い「空間づくり」だけでなく、スターバックスでは「会員限定」のサービスを手厚くすることで、顧客の経験価値を高めることに成功しています。
スターバックスの会員限定サービスの一例
・スターバックス リワード:購入額54円につき「Star」が1つ集まり、Starを一定数貯めると「Reward eTicket」と交換できる。eTicketは上限700円(税抜)で、好きなドリンクやフードメニューと交換が可能(ポイントでなく ”star” という表現に特別感がある)。
・マイコーヒーパスポート:コーヒー豆を購入すると、翌日に豆のパッケージをイメージしたスタンプがアプリ内に表示される。スタンプの下にはメモが残せる仕様になっており、味の感想や美味しかった豆の挽き方などを、顧客それぞれが書き込むことができる。
・マイストアパスポート:来店翌日に利用店舗のオリジナル画像とメッセージが、アプリ内に表示される機能。「御朱印集め」の要領で、各地のスターバックス店巡りを楽しむことができる。
・モバイルオーダー&ペイ:アプリから自由にドリンクをカスタマイズし、事前にオーダーすることが可能。ゆっくりとカスタマイズを選べる上、スターバックスの懸念である「長い列を並ぶ負担」が軽減できる(コロナウイルスが蔓延する以前の2019年時点から実装)。
顧客の日常に溶け込みながらも、常にユーザーが「特別感」や「非日常感」を得られるような体験価値の提供を、うまく仕組化しているCXMの代表的な事例です。
参考元:店舗でもデジタルでも考え方は同じ。スターバックス コーヒー ジャパンCMOに聞く、心を動かす体験の作り方 / CX Clip
CXMは、企業が今後ますます優れたCX(顧客体験)の提供を目指していく上で、意識的に実践していきたい概念の1つです。
いま一度「よりユーザーの視点に立ち返り」「顧客の心理や感情に寄り添って」どういった体験価値の提供が求められているのか、立ち止まって考えていただければ幸いです。
また理想的な「顧客体験」の提供を企業として継続的に行えるよう、社内の仕組みづくりや社員の理解を深める活動にも着手していきましょう。
「CX Value Lab」では中小企業や個人事業主向けに、「顧客体験」の向上を図るための各種サポートを実施しています。
気になっていただけた方は、ぜひ過去のコンサルティング実績をご覧ください。
→ 深い顧客理解を得て戦略立てができる心強さを実感││桑原法律事務所
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