コラム

顧客体験価値中心の経営モデルとは

2022.10.06

「顧客体験価値」 – 当社の社名の由来

当社が社名に冠する「CX」とは、「Customer eXperience」、つまり「顧客体験価値」を示します。当社では、通常のコンサルティングにおいて、この「顧客体験価値」を軸とし、マーケティングの施策、セールスの支援、カスタマーサクセスの設計、新規事業の支援など多岐に渡り支援をしています。

なぜ「顧客体験価値」を軸にしているのか。その答えは至ってシンプルです。顧客は「モノ」にお金を支払っているわけでも、「サービス」に支払っているわけでもありません。自身の解決したい課題を解決するための「いい体験」に対価を支払っているのです。

顧客体験価値(Customer eXperience)とは

では改めて顧客体験価値とは。以前こちらのコラム記事で以下と定義しています。

CXとは?顧客体験価値の重要性・取り組み手順について事例を用いて解説

ここで主張したいのは、売り手側のモノやサービスと決して同義ではないということです。

なぜなら当然ながらモノやサービスは売り手側が提供するものであり、”いい体験”と定義するのは常に顧客であるということです。

よって、顧客側のペインや課題を解決するであろうと売り手側が企図し、提供したとしても、顧客が本質的にペインを解決できなければ、”いい体験”にはなりません。

この顧客体験価値の本質を語る上でも避けられないのは、セオドア・レビット博士が、著書『マーケティング発想法』(1971年/原著は1968年出版)の中で紹介した「ドリルの穴」でしょう。

「昨年、1/4インチ口径のドリルが100万個売れたのは、人びとが1/4インチのドリルを欲しかったからではない。1/4インチの穴が欲しかったのである」

たとえばあなたがホームセンターの店員であれば、「ドリルが100万個売れた」という風景が見える一方で、そのドリルが開ける”1/4インチの穴”という場面は、購入者の自宅までついて行かなければ見ることができないでしょう。

売り手は意識をしない限り、顧客が物を購入したところしか見えません。

このドリルを必要として購入し、自宅に帰って1/4の穴を開け、そして何を解決しているのか、ドリルにまつわる一連の体験全てを把握することはできません。

では1/4インチの穴で何を実現するのか。

もしそれがわかったら、別の解決策を提示できるかもしれません。

1/4インチの穴を開けたのち、家具を取り付けるのであれば、家具の出張取り付けサービスをホームセンターで提供してもいいかもしれません。

はたまた1/4インチの穴を複数開けて、犬小屋を作るのであれば、ドリルのいらないDYIの犬小屋や、犬小屋の完成品をドリルの隣に置いてみてもいいかもしれません。

この一連の体験を仮説立て、理解することができれば、新たな需要を喚起するチャンスにもなるのです。

顧客ニーズとは?ウォンツとの違いや真のニーズを見つける方法を解説

「顧客体験価値」と「顧客中心主義」(カスタマーセントリック)の違い

過去様々な企業において「顧客中心主義」(カスタマーセントリック)が提唱された時期がありました。

これは企業が「顧客を第一に考え、顧客のニーズに応える」ということですが、この「顧客中心主義」には欠陥があります。

それは企業が主語であることにあります。企業側から見た「顧客のニーズ」ほど当てになりません。

この場合の「企業から見た顧客のニーズ」はたいていの場合は、表層的なニーズであると考えた方がいいでしょう。

極端に言えば「ドリルの穴」で言うところの”「ドリルが100万個売れた」という風景”=”ドリルが欲しいというニーズを持った100万人”しか見えていません。

一方で「顧客体験価値」では、顧客を主語にして、時間と空間と感情を付加した「経験・体験」で組み立てていきます。

そのため顧客のためではなく、顧客のありたい姿、享受したい価値を提供するためには、以下の3点が重要な論点です。

  1. 顧客のありたい姿を分析・仮定する。
  2. どのような価値を提供するか、その価値の対価はいくらかを定義する。
  3. その価値を提供・改善するための社内体制や経営資源を確保する。

上記を企業で実現する中での論点は多岐に渡りますが、ここで特に重要なのは、以下2点の問いです。

  1. 顧客のためになる体験は、必ずしも顧客自身がイメージ・言語化できていることだとは限らない。
  2. 持続的に体験を提供するためには、社内の経営資源が健全でいなければならない。

この2点の問いを希求することこそ、弊社が新たに掲げる「顧客体験価値提供を目的とした経営モデルへの変革」(CXX – Customer eXperience Transformation)を支える大きな問いです。

顧客体験価値提供を目的とした経営モデルへの変革とは

「顧客体験価値提供を目的とした経営モデルへの変革」(CXX – Customer eXperience Transformation)とは、「顧客にとって最適な体験を提供するために、自社の経営資源を持って持続的に提供ができ、価値の交換ができている状態に、自社を作り替えること」と定義しています。

CXX化した企業が提供できる体験とは

会社が提供するべきは、モノでもサービスでもなく、さらに踏み込んだ「顧客の体験」です。

ドリルを売ることでも、ドリルによって直接的に得られる価値(=穴)でもなく、その先に「本人すら明確に自覚していない範囲」を提供することができれば、ドリル自体にナラティブな意味を付加することで、新たな価値を創ることができます。


上記のように、本人が自覚すらしていない価値の範囲が「子供と家族の成長」であれば、「ドリルは穴を開けるだけではなく、ドリルによって家族が成長するための次の扉を創る」というストーリーが生まれています。

このストーリーに対して、ドリルはどのような存在なのか。それを言語化し、提供することで、新たな付加価値を提供できることになります。

こういった顧客の自覚していない範囲へアクセスし、仮説を立てて、ストーリーを創り、検証して改善していくというプロセスは、既存のマーケティングやセールス、カスタマーサポートなどの組織がサイロ化している状況では実現できません。

CXMとは?優れた顧客体験の提供に欠かせない、概念や成功事例を解説

CXX化した企業が持続的に価値を提供するために

前節の末尾で一部触れましたが、実現するための業務プロセスの他に、持続化するための考え方がまず大前提となります。

平易な言葉で表現すると、「社内のスタッフが幸せでいられるか」です。

日本には”お客様は神様です”という言葉がありますが、一般的にこの言葉は「お客様こそが中心であり、お客様が求めることに応えること」と捉えられがちです。

この言葉の起源は三波春夫さんと言われていますが、彼はコンサート会場に来場した自身のファンに対してそう伝えたのであって、世の中の人に伝えたわけではありません。

ファンは三波春夫さんのことを考えて行動する方々。

つまりお客様でも、製品やサービスにロイヤルティを持ち、きちんと理解し、わきまえた行動を取る方々のことを指しています。

さらにこういったロイヤルティの高い顧客の声を聞くことは重要ですが、それを真に受けるのではなく、取捨選択し、さらに社内で実現可能かどうかを検討すること。

特に社内のスタッフがその実現によって、大きな心理的・肉体的負荷をかけるような施策であってはなりません。

それによって、企業の持続性が失われてしまい、結果として製品やサービスの価値が低下する。

それでは本末顛倒です。

まとめ

今回は顧客体験価値中心の経営の導入部分について言及しました。

今後も何回かに渡り、顧客体験価値中心の経営モデルの必要性や、その実現方法について記載していきたいと思います。

企業にとって「顧客」とはどのような存在かのあり方自体が変わってきていると思います。

マーケティングの大家フィリップ・コトラーは「マーケティング4.0」で、ファン化した顧客の定義を新たに「共創パートナー」と定義しました。

我々は顧客=共創パートナーから、筋のいい示唆を受け続ける経営でいることが重要ではないでしょうか。

弊社では顧客体験価値を企業の強みにしていくための、コンサルティングを行なっています。

具体的にはカスタマーサクセスの支援、顧客を起点とした新規事業の創出やマーケティング、カスタマーサービスの効率化の支援など、貴社の顧客体験価値を成長させるための伴走支援を行なっています。

1時間無料でご面談可能ですので、気軽にお問い合わせください。

寄稿者

廣瀬隆彦(CX Value Lab株式会社代表取締役)

エンターテイメント企業でアーティストのマーケティングや直販ECサイトなどの新規事業に従事、世界的レストランチェーンのマーケティング責任者や最大手フリマアプリ企業のカスタマーサービスのマネジメントを経て、CX Value Lab株式会社を創業。

SaaSベンチャー企業の支援や中小企業の新規事業・DX化支援などを中心に、社内起業家の育成なども行う。

グロービス経営大学院大学卒業(経営学修士・MBA)

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