2022.12.07
カスタマーサクセスの体制を構築し顧客の成功のために積極的な「攻め」の姿勢で関与していくためには、顧客の不満や抱える課題に関して、迅速な対応をおこない収束させていく「守り」の姿勢で対応できるカスタマーサポートが必要です。
前回でもお伝えしましたが、カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは指標やゴールは異なり本質的にはまったく違う役割になります。
顧客への関わり方、活動起点が異なるだけで、顧客体験を意識した組織的な取り組みが最終的には顧客の成功につながります。
目次
カスタマーサポートとは、お客様からのお問い合わせに対応する業務であり、商品やサービスに関する不安や不明点の解消に向けてお客様をサポートします。役割としては大きく3つあります。
顧客の抱える課題や不満に対して「迅速」かつ「正確」に解決することです。
お問い合わせ対応によって問題や不満を抱えた顧客を自社のファンにすることも可能です。
顧客満足度を向上させることで顧客は商品やサービスに愛着を持ち生活の一部になります。また、継続して利用することになります。
継続して利用しファンになると、SNSなどの口コミによって商品の良さを周りの人に広めてくれることも考えられます。
適切に丁寧で親切な対応をすることで、顧客の満足度・収益の向上を担うことができます。
カスタマーサポートは、顧客対応を行うため、自社の商品・サービスの課題や不満を誰よりも認識することが可能です。普段の問い合わせを分析し会社にフィードバックをおこないます。
問い合わせを通じて顧客から得た、自社商品・サービスの改善点を社内にフィードバックし、より良い商品・サービスを創り上げることに貢献します。
1つ目の課題として、担当者によるサービスレベルのムラがあります。
業務が属人化されナレッジマネジメントができていないと標準化されず、担当者によって提供するサービスの品質や対応時間にムラが生じます。サービスのムラをなくすためには、情報共有・ナレッジマネジメントを徹底してムラをなくしていきます。
業務を標準化するためには、お客様対応に関するマニュアルを作成することや、対応の手順や回答内容をマニュアルで可視化し、最新情報を共有できる体制作りが重要です。
2つ目の課題は、カスタマーサポートの担当者への育成体制の構築です。
新人やベテランの対応者に関係なく、組織として設計し、サービス提供する上で必要な知識やスキルを担当者が習得できる環境が重要です。
勉強会の開催や、定期的に業務プロセスを見直し、サービスの成長や顧客数の増加によって知識やスキルが不足していないのか見直しすることで効率化を図りながら育成をおこないます。
また、チーム内で最新情報の共有ができる会議体の設定や担当者同士で顧客対応に関して相談できる場を設けたり、上司との1on1ミーティングなどでコミュニケーションを取ることで、担当者の業務理解を促進と育成のボトルネックの把握をおこない担当者の成長を支援します。
3つ目の課題は顧客の自己解決促進です。
自己解決とは、顧客が問い合わせすることなく自分自身で調べて不明点を解消することです。電話やメールだけでなく、FAQサイトやチャットボットなど顧客に他のコンタクトチャネルを設けることで問い合わせをする手間を省くことができます。
また、現場の負荷軽減につなげることができます。この時、他のコンタクトチャネルを設けますが、FAQサイトやチャットボットを顧客が利用すると時の顧客体験を整理し、デザインや回答内容、顧客がたどり着く動線など整備しながら進めます。
顧客体験を無視してFAQサイトやチャットボットを作成してしまうと、顧客は課題を解決できずに、不満が募って結局電話やメールでカスタマーサポートへ問い合わせすることになります。
カスタマーサポートのKPIはサービスの品質を示します。
品質の高いサービスが提供されていることでKPIは達成され、逆に達成できていない場合は、改善点が多いサービスと言えます。
カスタマーサポートはカスタマーサクセスを左右する要素のため、品質を評価する指標で設定をしながらも、カスタマーサクセスにつながる副次的な要素も意識したKPI設定を意識します。
問い合わせを受け、最終的にどの程度解決したかを割合です。
基本的にカスタマーサポートは、問い合わせに全て回答する必要があります。そのため100%の解決率がKPIになります。一部の問い合わせを無視するような数値設定は望ましくありません。
ただし、回答できないような問い合わせが発生することも予測して、どういう課題を解決するのか明確に定義しておかなければなりません。
また、課題解決までのやり取りをKPIとする場合は、「一次解決率」をKPIに置くこともあります。
課題に応答するまでにどの程度の時間が必要になったのかを示す指標になります。
カスタマーサポートの満足度に影響のある応答までの時間は可能な限り早く対応することが重要です。
どの程度の時間で応答するべきかはサポートの内容によって異なります。そのため、自社のサービスにおいて満足度に影響のある応答時間を検証しながら明確に定義していきます。
数値目標として100%達成を設定します。
お問い合わせを受け解決されるまでの時間も重要になるためKPIに設定します。
もし、課題が解決したとしても、長時間待たされてしまっては満足度が下がってしまい、クレームになりかねません。
言うまでもなく課題解決までの時間は短くする必要があります。
可能な限りスムーズに解決して、必要以上に時間をかけて顧客の感情に負のイメージを抱かせるべきではありません。
また、課題解決された思っていたがその後再度お問い合わせが発生することがあります。
実は解決しておらず、お問い合わせがクローズしていないことを示します。
こういう状況も想定して一度クローズした課題を、再度の問い合わせでオープンした割合として「課題の再オープン率」を設定します。
課題の再オープン率が高いということは、回答内容が悪かった、適切でなかったことであり、是正すべき状況であり、品質向上のために状況をキャッチアップし対応することになります。
カスタマーサポートが一回あたりの対応に要する時間です。
なお、処理時間の定義は自社のサービスに応じて検証しながら設定していきます。ダラダラと対応すると対応の満足度が下がる可能性もありますし、人件費も無駄に要することになります。
ただし、サービス提供に対してあまりにも短いKPIを設定すると、KPI達成のためだけに満足度の低い対応をする可能性があるため、満足度を下げずに人件費を抑えられるポイントを設定することになります。
短い設定はカスタマーサポート担当者にはプレッシャーになりますので、精神的な負担と対応品質のバランスを考えることが重要です。
カスタマーサポートの体制構築は自社の商品やサービスのカスタマーサクセスを目指す上で同時に整備を進めます。
顧客からの問い合わせに対して受け身の姿勢で課題や問題解決を迅速におこないながら、顧客の不満解消と顧客満足を改善します。
この「守り」の姿勢とカスタマーサクセスの「攻め」の姿勢をバランスよく運用することで顧客の成功を継続的に支援が可能になります。
顧客の成功のためには、顧客目線を忘れずに、組織の役割や指標を適切にサイクルを回していくことが重要です。
内山直幸(CX Value Lab株式会社シニアコンサルタント)
業界最大手の広告代理店にてセールス、事業企画、マネジメント業務に従事、最大手フリマアプリ企業のカスタマーサービスのマネジメント、医療系スタートアップの事業推進を経て、CX Value Lab株式会社に入社。
SaaSベンチャー企業の支援や中小企業のカスタマーサクセス支援、カスタマーサポート支援、新規事業・DX化支援、組織マネジメントの伴走支援を行う。
グロービス経営大学院大学卒業(経営学修士・MBA)
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