2023.01.18
今回はカスタマーサクセスを取り入れている企業で起こっている、セールスとカスタマーサクセスの部門間連携についてお話します。
カスタマーサクセスが重視され始めたのは、2000年頃からといわれており、その背景には「SaaSビジネスの増加」や「営業スタイルの変化」「顧客の購買行動の変化」があり、そのなかでも「サブスクリプションサービスの増加」は大きな影響をもたらしたと言われています。
顧客の購買行動が「必要なサービスがある場合は買い切り」から「必要なときに、必要なだけサービスを使う」スタイルへと変化しました。
この変化によって、顧客体験が一変し、企業は解約されやすくなったビジネスモデルに対して継続的な支援やアップデートなどを提供するための部門としてカスタマーサクセスを導入する企業が増えていきました。セールスも今までとは同じ考え方や役割では通じないため、セールスマインドの変化と役割の変化を求められるようになりました。
カスタマーサクセスの導入によって部門の役割も変化して、セールスは成約して終わりではなく、カスタマーサクセスと連携していかにして自社のサービスや商品を「簡単に利用してもらうのか」「継続して使ってもらえるか」「継続することでファンになってもらうのか」という顧客が契約する前の工程や後の工程を考慮した成約が重要になりました。
カスタマーサクセスを実行する部門は「理想的なセールスとの連携」を意識したプロセス構築やコミュニケーションを設計します。
顧客の実現したいことや課題をセールスから引き継ぎ、顧客に自社のサービス・商品の支援を能動的におこない「継続して使ってもらえる」環境を準備しリファラルやアップセル、クロスセルといった活動につなげます。
この活動の変化や役割の変化に対して、とりあえずカスタマーサクセスやカスタマーサービスを導入したり、役割変更を明確にしないまま導入が進み部門間連携がうまくいかないという問題が起きています。
サブスクリプションの場合
買い切りの場合
握りが甘いとは=顧客と期待値の擦り合わせができている状態です。
全ての顧客が目的を最初から持っているわけではないので、商談時に一緒に考えていきます。
一緒に考えることで、何が解決できると嬉しいのか、何を実現できたら成果として認識できるのか把握できます。
よくあることとして、とりあえずこれでいきましょう、とりあえずこんな感じでやってみましょうという会話を聞くことがありますが、このとりあえずが握りが甘い理由につながります。
丁寧に擦り合わせすることで、お互いの状況を理解して要求していい範囲、期待をしていい範囲を認識できます。
課題例
①販売する過程で顧客が何を実現したいと考えているのか、どういう課題があって解決したいと考えているのか整理できていないので期待値をコントロールできていない
顧客が自社のサービス・商品によって実現したいことがわかっていないことで、導入目的がカスタマーサクセスの担当者は理解できず、導入しながらヒアリングするためオンボーディングに時間がかかってしまいます。
課題が何で解決したいことが曖昧だと、業務プロセスの中で自社のサービス・商品をどのように活用すればいいのかアドバイスが適切にできないことが発生します。
また、短期で可能なことなのか中期的に可能なことなのか判断できないままオンボーディングを進めると不満にもつながります。
②企業を取り巻く外部環境や経済環境などを考慮した自社サービス・商品によって与えられる提供価値の変化ができていないことで導入後に期待値との乖離が起きる
自社のサービス・商品の提供価値を、顧客の声や顧客が置かれている環境に応じて変化させずに提供しているため、導入後に期待値が異なりオンボーディング途中に解約リスクが上昇したり、導入自体が止まってしまいます。
部門間、顧客と企業の間の両方で認識相違が起きクレームになることもあります。
③契約したサービス・商品をいかにして業務プロセスを複雑にせずに導入するのか現状の業務プロセスのヒアリングが浅いため負担が大きくなる
セールスは契約する段階で業務プロセスを確認して、自社のサービス・商品でカバーできる範囲の要望なのか、今は難しいけど開発予定で対応可能な範囲なのかなど顧客と擦り合わせして契約を進めていく必要があります。
業務プロセスと自社サービス・商品の導入で解決するため、活用方法するために業務プロセスが複雑化する場合、契約前に伝えておかないとクレームになりますし、後から調整することになると顧客もカスタマーサクセス担当者も負担が大きくなり部門間連携がうまくいっているとはいえない状態です。
上記の部門間連携がうまくいかない理由を踏まえ、カスタマーサクセス部門から考えた理想的なセールスとの関係に関して重要なポイントを2つ挙げます。
①セールスが契約までのプロセスで何をすべきか整理して連携します。
②カスタマーサクセス部門からセールスに顧客の声を共有し販売戦略のアップデートをおこないます。
また、上記に加えて、そもそもカスタマーサクセスを置くべきか、という前提を整理したうえで、カスタマーサクセス部門が直接聞いている顧客の声をセールス以外の部門にも発信できる体制を整えます。
普段から一番顧客との接点がある部門だからこそ、顧客が自社のサービス・商品をどう捉えているのか、導入して実現したいことに向かっているのか、課題解決につながったのか、何が不足しているのかを理解しているのでプロダクトの改善、マーケットフィットのために重要な情報を社内にフィードバックします。
この体制により、リファラル活動やアップセル、クロスセル活動にもつながります。
理想的なセールスとの関係が達成されることで目指す指標は、以前のコラムでもお伝えしましたが、①解約率の低減 、②アップセルやクロスセルによる売上貢献 、③LTV最大化になります。
カスタマーサクセス部門は後方支援ではなく、セールスと連携して自社の売上獲得に貢献する部門になります。
理想的なセールスとの関係についてまとめると、コミュニケーションの活性化によって情報の流れをスムーズにすることです。
ただし、思いつきではできないので、自社の戦略や各部門の役割を定義づけして、なぜ、誰が、いつ、どのようにするのか、それにより何が達成されるのかを設計し改善しながら取り組んでいくことになります。
顧客の体験を中心にして、データをもとに顧客に積極的に関与することでカスタマーサクセス部門の役割を最大化して「顧客の成功」を実現していきましょう。
内山直幸(CX Value Lab株式会社シニアコンサルタント)
業界最大手の広告代理店にてセールス、事業企画、マネジメント業務に従事、最大手フリマアプリ企業のカスタマーサービスのマネジメント、医療系スタートアップの事業推進を経て、CX Value Lab株式会社に入社。
SaaSベンチャー企業の支援や中小企業のカスタマーサクセス支援、カスタマーサポート支援、新規事業・DX化支援、組織マネジメントの伴走支援を行う。
グロービス経営大学院大学卒業(経営学修士・MBA)
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