コラム

中小企業で実現するプロジェクト管理 – プロジェクト開始編

2023.04.06

プロジェクトの管理方法については長年あらゆる企業や学術としても研究され、国内や海外にいくつも研究機関や体系的にまとめたプログラムなども存在しますが、そのターゲットは大企業に向いたものがほんとんどとなっています。

また、システム開発手法ではウォーターフォール型に対してアジャイル型が一般化され、そのアジャイルの方法をシステム開発以外の分野にも活用することで、ベンチャー企業は不確実なマーケットを切り開くことができ、成長を重ねて来ました。

一方で、経営資源が限定的な中小企業に向いて体系化されたものはありません。

当社では実務として、コンサルティング(分析、勝ち筋の明示)を行い、その達成に向けたプロジェクトマネジメントを伴走して支援しています。その中で中小企業にとって必要なプロジェクトマネジメントについて、今後不定期で発信していきます。

今回は、プロジェクトを開始する時点での要諦について、挙げていきたいと思います。

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なぜプロジェクトをするのか?の理解を統一する。

私が20代の頃、当時在籍した大手事業会社で幸運にも複数のプロジェクトに参加することができました。そのプロジェクトはどれも重要で、グループ組織断的に検討するというもので、内容として既存の部門には任せることのできないものでした。

当時外部のコンサルティング会社さんが時間を割いて説明してくれたのは、なぜこのプロジェクトを行うのか?と、なぜこのメンバーなのか?という2点です。

プロジェクトは3ヶ月、場合によっては1年以上かかるものもあります。

人は常に深層心理で「なぜ?」を問い続けている生き物です。最初は「このプロジェクトをやるから」で動き始めていても、「なぜ自社はこのプロジェクトが必要なのか」そして「自分はなぜこのプロジェクトメンバーにアサインされたのか」が不明確なままだと、いつしかモチベーション自体が低下します。

また、プロジェクトが進んで数ヶ月を経過すると、やはり同じ問い「このプロジェクトは何の目的だったか」「なぜ自分がこのプロジェクトメンバーだったのか」が頭によぎり始めます。

これらの状態を防ぐためには、以下のような打ち手が重要です。

プロジェクトの目的やゴールを決める

当然ながら、なぜこのプロジェクトを行うのか、なぜこのメンバーなのか、その期待値を伝えます。

もしどういった項目が必要かがわからないという場合は、こちらのプロジェクトキャンパスを参考にされると良いと思います。

このキャンパスの作者によると、プロジェクト開始時にワークショップ形式で2~3時間の対話をもって、メンバーに浸透させることを推奨しています。

DIAMOND Harvard Business Review 2022年2月号「プロジェクトエコノミーの到来組織全体でマネジメントスキルを高める」by  アントニオ・ニエト=ロドリゲスから引用/一部加筆

項目としては、なぜやるかの目的、メンバーへの期待値に加えて、以下を網羅的に整理できていると良いでしょう。

  • 人材
    • 利害関係者
    • 後援者
    • リソース
  • 創造物
    • 成果物
    • 計画
    • 変化
  • 投資
  • 便益

プロジェクトの評価方法を決める

プロジェクトの目的や背景を決めたら、続いては”何をもってプロジェクトの成功と呼ぶのか”を定性と定量で評価するための評価軸を決めます。

おすすめは”SMART”のフレームワークです。

  • S – Specific(具体的)
    • 目標は明確で、具体的な内容を含む必要があります。目標が具体的であれば、達成するための方向性や必要なリソースが明確になります。
  • M – Measurable(測定可能)
    • 目標は測定可能である必要があります。目標が測定可能であれば、進捗を追跡し、成功の尺度を確認できます。
  • A – Achievable(達成可能)
    • 目標は現実的で、達成可能である必要があります。目標が達成可能であれば、意欲が向上し、達成感が得られます。
  • R – Relevant(関連性)
    • 目標は、個人や組織の長期的なビジョンや戦略に沿っている必要があります。目標が関連性を持っていれば、組織や個人が方向性を確認し、効果的に取り組むことができます。
  • T – Time-bound(期限)
    • 目標には期限が必要です。目標に期限があれば、進捗状況を管理し、達成までの時間を把握することができます。

特にプロジェクト管理の面において難所であるのは、プロジェクト進行段階において変化を最も受けやすいT、つまり期限、スケジュールの管理でしょう。

プロジェクトを進める中で、想定外は必ず発生します。追加で調整が必要な論点が生じると、タスクとタスクの相関性とスケジュールの前後に影響を与えます。ここには注視が必要です。

一方で、変更が起きると言ってスケジュールを具体的に決めないのも問題があります。変更を前提としたバッファを持つことも必要です。

プロジェクトの進捗確認及びコミュニケーション方法を決める

当然ながらプロジェクトの進捗における定例会を決めます。

とはいえ、この定例会が定期進捗報告会では、その定例会までものごとが敏捷性を持って進みません。プロジェクトメンバーが定例会に報告するためにプロジェクトを実行する、というマインドセットになってしまうと、手段の目的化が発生します。

ここでおすすめしたいのは、メンバーとの1on1を組み合わせるという手法です。

中小企業の経営資源の関係上、プロジェクトメンバーは本来の業務と並行して行うメンバーが大半でしょう。通常業務の繁忙期における影響を受け、プロジェクト進捗に影響を与えてしまいます。

また、プライベート要因も見逃せません。このようなことは心理的安全性が担保された状態の1on1でしか出てきません。

進捗確認をする定例会の他に、メンバーとの1on1も可能な限り定期的に組むことをおすすめします。

プロジェクトを管理することは、メンバーを型に当てはめるだけではなく、プロジェクトメンバーのソフトの部分への対応も必要なのです。

まとめ

今回は中小企業におけるプロジェクト管理においての要諦のうち、開始時に必要な要素をまとめました。

次回以降で実務的な内容について言及していきたいと思います。

寄稿者

廣瀬隆彦(CX Value Lab株式会社代表取締役)

エンターテイメント企業でアーティストのマーケティングや直販ECサイトなどの新規事業に従事、世界的レストランチェーンのマーケティング責任者や最大手フリマアプリ企業のカスタマーサービスのマネジメントを経て、CX Value Lab株式会社を創業。

SaaSベンチャー企業の支援や中小企業の新規事業・DX化支援などを中心に、社内起業家の育成なども行う。グロービス経営大学院大学卒業(経営学修士・MBA)

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