2021.12.08
顧客体験(CX)は、現代のビジネスシーンで欠かすことのできない概念の1つです。体験価値の向上に努めることで、企業は顧客に選ばれ続ける優れた商品・サービスの提供が実現できます。
今回は「顧客体験(CX)価値とは?」をテーマにその概要や重要性、体験価値を高めるための施策手順などをご紹介します。
目次
顧客体験(CX:Customer Experience)とは、顧客がプロダクトやサービスを利用する中で得られるすべての体験を表した言葉です。商品を認知して比較検討する段階から、実際に購入して使用するまでの一連の流れと、それに伴って生じる体験は総じて「顧客体験」となります。
1- B子さんは最近、パソコンの使い過ぎで目の疲れに悩んでいたところ、たまたまテレビでA社の「ブルーライトカット眼鏡」に関する情報番組を目にする。
2- ブルーライトカット眼鏡に興味を持ち、ネット上でA社を含め、複数の眼鏡メーカーの商品を比較検討する。
3- 口コミの良さそうだったA社の眼鏡を実際に見るため、近隣の店舗へ足を運ぶ。
4- 実物を見て、優れた機能性とデザインに惹かれ、商品を購入する。来店中のスタッフの対応も、非常に心地の良いものだった。
5- 実際に仕事でパソコンを使う際、ブルーライトカット眼鏡をかけてみる。
6- 目の疲労が軽減され、仕事が今までより捗るように。長年悩んでいた頭痛も解消された。
7- 高い効果を感じられたので職場の同僚C子さんにも勧めたところ、彼女も同じように眼精疲労が軽減されたと嬉しい報告を受ける。
このように「実物の眼鏡を見て心が惹かれた」「実際に眼鏡をかけたところ目の疲労が軽くなった」「眼鏡を勧めた同僚のC子さんも、目の疲労が軽減され喜んでくれた」といった一連の体験は、すべてB子さんにとってのCXであるといえます。
顧客体験(CX)と比較されることの多い、2つの概念とCXとの違いについて確認します。
UX(User Experience)
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがサービスやプロダクトの利用を通じて得られる「体験」を表す言葉です。とある商品の購入を例に考えるなら、商品の認知から申し込み・使用するまでのすべての接点で生じる体験がUXと言えます。
一見、CXとUXは非常に似た概念のようですが、UXが時点ごとの体験であるのに対し、CXは「商品やサービスの利用」で生じるプロセス全体での体験を表します。CXはUXの上位互換の概念にあたり、満足度の高いUXの積み重ねが価値あるCXを創出すると考えられます。
CS(Customer Satisfaction)
CS(顧客満足度)とは、顧客が自社の商品・サービスを利用し、どの程度の満足度を得られたかを測る指標のことです。アンケートや口コミによって得られるCSを基に、企業側は顧客の商品やサービスに対する評価の把握が可能です。
CSの向上を図ることは、結果としてCX(顧客体験)の価値を高めることに繋がります。
近年、顧客体験価値の重要性が高まっている背景には、「モノ消費」から「コト消費」へと転換した消費スタイルの変化があると考えられます。
モノ消費:自動車や家電・アクセサリーなど、「モノ」の消費を中心とした消費スタイルのこと。顧客はより高級品や流行りの商品を所有することで、満足度を得る。
コト消費:食事する・旅行に行く・ジムに通うなど「体験」を中心とした消費スタイルのこと。モノの「所有」にはこだわらず、あくまで「体験」することに価値を見出す。
例えば、以前であればCDやDVDを購入して楽しんでいた音楽や映画も、現代ではレンタルやサブスクリプションサービスで利用されるのが一般的となりました。また車や家具・家電なども、レンタルで代用すれば十分といった価値観が、現代では珍しくありません。
こういったニーズの変化から、企業側が「ただ優れた商品やサービスを提供する」だけでは、顧客は満足を得られなくなりました。また技術レベルの上がった現代では、商品やサービスの品質だけで競合他社と差別化を図ることも難しくなりました。
そのため顧客に「モノやサービスの購入」を起点に様々な付加価値を感じてもらえる「顧客体験価値の向上を図ること」は、現代において “顧客に選ばれ続ける企業” であるための必須要件であると言えます。
例えば、テラス席から富士山の絶景が見えることで有名な「コーヒーショップ」に来店し、珈琲を注文するとします。このとき顧客が購入したのは「1杯の珈琲」ですが、実際は「富士山の絶景を見ながら珈琲を飲む」という体験に価値を感じお金を支払ったと考えられます。
このように企業側からすれば「商品・サービスを売る」行為だとしても、顧客にとっては商品を購入することで「得たい体験」を手に入れていると言え変えられます。顧客が商品やサービスの利用を起点として経験するすべてのシーンで、それぞれの価値をどうすれば最大化できるか?という発想が企業側に求められています。
過去に顧客体験価値の向上に向けて関わらせていただいた、株式会社U(以下、U社)の事例をご紹介します。
U社はエステサロン向けの「管理・予約システム」を提供する企業です。サロン側からすれば「これまで紙管理が一般的だった顧客情報の予約・管理を、システムで一本化できる」、また利用者側としても「ネットからいつでも簡単に予約できる」という点で、U社のシステムは非常に価値のあるサービスです。
しかしサービスを提供する中で、顧客であるサロンより以下のような声が集まります。
・せっかく導入したシステムが、操作が難しく一部のスタッフしか使いこなせない
・豊富な機能のうち、頻繁に使用する一部の機能しか使いこなせていない
・サロンのお客様が予約システムを利用してくれない(電話などで問いあわせがくる)
システムを導入することでサロンスタッフやお客様の満足度を上げるはずが、ITシステムに不慣れな一部のスタッフやお客様にとっては、むしろ大きな負担になっていたのです。
そこでU社は提供サービスを一から見直し、誰でも快適に使えるような、シンプルかつ明瞭なシステムへと改善をおこなうことに。またシステム内容だけでなく、導入時の社内説明会や導入後の教育フォローなど、サロンが問題なくシステムを使いこなせるまでの支援体制も整備しました。
その結果、
・サロン側がスムーズにシステムの導入・運用をはじめられる
・操作に悩んだ際はいつでもU社へ相談できる
・面倒だった顧客の予約・管理が効率的に進められるように
・無駄な残業がなくなりスタッフの満足度があがる
・お客様側も予約が快適になり満足度があがる
といった風に、システムの導入前から導入後までの一連の過程で、サロンスタッフ・利用客総じての満足度向上を図ることができました。現在も常にサービス内容すべての分析と改善を繰り返しながら、さらに顧客に喜ばれるサービスの提供に取り組んでいます。
▼その他、CX Value Labの過去のコンサルティング実績
顧客体験価値を高めるためには、まず自社の顧客や提供する体験価値の現状を整理し、把握する必要があります。顧客体験価値を向上するための手順について見ていきましょう。
1.ペルソナを設定する
2.ペルソナを基にカスタマージャーニ―を作成する
3.全体像を見て課題点を洗い出し、改善案を査定・検証する
はじめに、実際に商品やサービスを利用してほしい「ペルソナ」像を決めます。
ペルソナとは、自社商品やサービスを売りたい「代表的な顧客像」のことで、年齢・性別などに加え、趣味趣向や行動習慣などを細かく設定します。
(例:40歳女性 / 専業主婦 / 旦那・娘と3人暮らし / 2階建ての一軒家 / 趣味は料理・映画鑑賞・手芸 / アンチエイジングに関心がある / ペットに猫を2匹飼っている)
設定したペルソナを基に「カスタマージャーニーマップ」を作成します。カスタマージャーニーとは、とある製品やサービスを利用する顧客の消費行動を、時系列で視覚化したものを指します。
商品の認知段階から購入後までのすべてのフローを列挙したカスタマージャーニーは、顧客体験の生じる範囲そのものであると言えます。CXを分析する上で、カスタマージャーニーの整理は必要不可欠です。
カスタマージャーニーの作成方法は以下の記事にて解説しています。
カスタマージャーニーを参考に、顧客と接点をもつすべてのポイントで「顧客体験における課題」を書き出していきます。このとき「顧客の体験価値を最大化すること」を判断軸に、改善の余地があるかを検討します。
またそもそも「顧客との接点が少ないフェーズ」に関しては、接触機会が少ないこと自体が課題である可能性も考えられます。
課題を列挙したらそれぞれに改善案を策定し、実行と検証をおこないましょう。より顧客に有益な価値を提供するため、継続的にサービスの検証・改善を繰り返します。
今回は「顧客体験価値」をテーマに、その概要や重要性・取り組み方について事例を交えてお話ししました。企業がこれからも顧客に選ばれ続けるために、顧客の体験価値を向上する意識は欠かせないでしょう。
まずは自社の商品・サービスの一連の流れを整理し、各接点での顧客体験を把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。
「CX Value Lab」ではより優れた顧客体験価値の提供に向け、企業様の一員としてお手伝いいたします。ぜひ会社の取り組みについてご覧ください。